このコンテンツは2002年4〜8月頃に作成したものがベースとなっています

厳罰化のスパイラル〜序章〜

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なぜ繁華街では取締りがなされないのか?
  • バックグラウンドの考察
  • 告発がなければ暴かれない不正
  • アンタッチャブル・ゾーン
  • 警察がしなければならないこと
  • 取締り(法執行)のウラ表

    バックグラウンドの考察

    1.役所の許認可

    中央集権型のニッポンの警察システムはアメリカとは大きく異なっている。そしてニッポンにおける警察署長の権限は絶大で、アメリカの市警察署長の比ではない。

    ニッポンの警察署長
     繁華街で営業を行う店に対する警察の許認可権については次のリンク先をご参照ください。

    風俗営業と許可の話(日野行政法務事務所)
    風俗営業等の規制概要と営業申請手続き(神奈川県警察)

    2.司法に介在をさせずに「役所の判断」で執行される行政処分

    三権分立(司法・行政・立法の三つの権力がそれぞれ独立して公正さを保つ)は、ニッポンではまともに機能していない。司法にかわって、行政(お役所)が司法機能を抱え込んできたからである。

    警察以外のお役所でも、こうした「行政処分の優位主義」がみられます。そして「業務停止命令」や「営業停止処分」として、所管する業界に絶大な「司法機能」を発揮できるわけだ。

    なぜ腐敗がなくならないか

    3.公益法人による業界支配とお役人の天下り

    お役所が許認可権限によって支配するそれぞれの業界には、 〇×業協会といった名称の公益法人が設立される。これら半官半民の中途半端な〇×業協会への天下りは法律で規制されていない。 そして、公益法人に業界標準を設定させたり、業界での資格や認定制度を〇×業協会に一任させたり、はては 〇×業協会に加盟しなければその業界に参入できないケースも存在する。

    公益の国際比較

    ケース・スタディ

    警察は、ひんぱんに「悪質な駐車違反を厳しく取締る!」とアピールしている。 しかし、交通安全運動期間を除けば、午後8時以降の繁華街で駐停車違反の取締りがなされることはありません。

    飲酒運転の抑止効果も期待できる、繁華街での駐停車違反の取締りを、なぜ警察がしないのか?考えてみよう。

    告発がなければ暴かれない不正

    お役人と業者との不適切な関係には、お役人の収賄やタカリ行為がからんでいる。しかし、こうした汚職事件は密室の犯罪と言われ、内部告発がない限りバレることはない。

    (1)直接的または間接的に役所の腐敗を感じさせられながらも、
       業界で生き残るために決して役所を批判することが許されない業界の現実。

    (2)「警察=正義」のイメージを捨てることができず、
       法律万能主義的な発想に収まりがちな世論。

    このふたつの問題が問題として広く認められることがなければ、オモテ(名目)とウラ(実態)がかけ離れたままで、役所が権益を保全するための仕組み(法規)だけが厳しくなっていくはずだ。

    アンタッチャブル・ゾーン

    警察腐敗を描いた幾多のアメリカ映画では、FBI(連邦警察)や検察が地域警察の腐敗を捜査する。(参照→演出される「正義の警察官」  一方、ニッポンの警察庁は「都道府県警察の腐敗=警察全体の威信低下」としていたため、内々処分を続けてきた。またニッポンの検察が、警察を捜査することもありません。

    もし筆者が深夜営業のクラブや飲食店を経営していたらなら、店頭での飲酒取締りや、午後8時以降の駐車違反が行われることはもちろん、 「風営法」関連の行政処分で大きなダメージを被ることになるだろう。 そうなったら、私は警察署長にひれ伏す以外、なす術はない。

    「悲惨な事故」をなくすために警察がしなければならないこと

    有力者の汚職が横行し、取締る立場の警察官がひんぱんに法を犯しているのが現実だ。また自分らの組織を守るためのお役人の裏工作や口裏合わせがうんざりするほど報道されている。

    「覚えてない」「忘れた」「調査中でコメントできない」「秘書が勝手に…」などなど。

    <オモテ向きのキレイ事>
     こうした見え透いたウソが繰り返されるニッポンなのに、道路にはウンザリするほどの交通標語が乱立しています。

    <ウラ側の現実
     表向きには“飲んだら乗るな”とされながら、効果のある場所で取締りがされていない。 そして、交通安全運動での一斉検問では、キップを切ると「じゃ気をつけて運転してね」で終わり。 ドライバーが「キップだけ切ればいいのかよ?」と疑問を感じるのは、とうぜんだろう。そして、こうした疑問は、取締りだけでなく、交通ルール全体への反感にも繋がっているに違いない。

    もし、警察が本気で“悲惨な死亡事故”を減らすつもりなら、次のことをしなければならないはずだ。

    1. 交通安全運動など警察活動をアピールするための集中取締りは止める。
      ※確信犯に「交通安全運動期間だけは自粛しろ」と言っているようなものだ。
    2. 無数のトラック協会や風俗・飲食業者との癒着を絶ち、ちゃんとした取締りをする。
    3. 交通事故の捜査書類を公開すること。

    この3つをしないで、警察が“大きな網”を持つのなら、 表とウラがさらに激しく開いていくだけだろう。

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