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平成13年9月

警察庁交通局

「運転免許の処分基準等の見直し素案」に対する意見の募集について

 近年、飲酒運転や無免許運転といった悪質・危険な運転による悲惨な交通事故が後を絶たず、社会問題となっています。このような中、交通事故によって家族を失った遺族の方々から悪質な運転者に対する処分を強化すべきであるとの意見が寄せられているほか、道路交通法の一部を改正する法律(平成13年法律第51号)の審議を行った衆議院及び参議院の内閣委員会は、「酒酔い運転等悪質な違反行為に対する点数や免許の取消しの場合の欠格期間の在り方等について更に検討を行う」ことを求める旨の附帯決議を行いました。このようなことを踏まえ、現在、運転免許(以下「免許」といいます。)の欠格期間及び点数制度の見直しについて検討を行っているところです。
 また、上記の改正道路交通法においては、障害者に係る免許の欠格事由の見直し等が行われました。この改正を受けて、今後、一定の病気等にかかっている者等についての免許の拒否や取消し等の基準等を道路交通法施行令で定めることになり、現在、検討を行っています。
 免許の処分基準等についての見直しは、国民の方々の生活に密接にかかわるものであることから、素案(見直し素案の骨子については別紙1。具体的な内容については別紙2参照)を公表して幅広く御意見を伺った上で、政令の改正試案の策定を行いたいと考えております。ついては、これに関し御意見のある方は、平成13年9月28日(金)までに次のあて先に御意見をお寄せください。(電話による御意見は受け付けておりません。また、頂いた御意見に対しての個別の回答は致しかねますので、あらかじめその旨御了承願います。頂いた御意見は、住所、電話番号、電子メールアドレスを除き公開される可能性があることを御承知おきください。)
 なお、政令の改正試案を策定した後、同試案に対するパブリックコメントを別途行います。
通信方法 あ て 先
(1)電子メールの場合 ************
(2)郵送の場合 ************
(3)FAXの場合 ************



別 紙 1

見 直 し 素 案 の 骨 子

1 免許の欠格期間及び点数制度の見直しについて

(1)極めて悪質な違反をして死亡事故を起こした者に対する欠格期間は、1回目の取消しであっても、5年の期間が指定できるようにします。(例えば、?@故意により人を死傷させた場合、?A酒酔い運転をして専らその人の責任で人を死亡させた場合については、5年の欠格期間が指定できるようにします。)
(2)死亡事故を起こした場合の点数を引き上げ、原則として、免許を取り消すことができることとします。(ただし、事故を起こした者に責任がない場合や責任が極めて軽微な場合には取り消さないこととします。)
(3)交通事故の被害者に重度障害が残る事故や治療期間が3か月以上である事故に対する付加点数については、新たに区分を設け、重くすることとします。
(4)酒気帯び運転をして人身事故を起こした場合には取消しの対象とするなど飲酒運転等の点数を引き上げることとします。
(5)無免許運転については、他の違反行為と合算して評価することとします。
(6)1年間無事故無違反の場合の点数累積等の特例(1年間無事故無違反であれば、点数制度上、それ以前の違反や免許停止歴をなかったものとして扱うという特例)の要件となる無事故無違反期間について、現在、免許停止期間や免許が失効した期間も含めて1年間としていますが、これを、運転が可能な期間に限る(運転可能期間が1年間以上あり、かつ、その期間無事故無違反である場合に限る)こととします。


2 病気等に係る免許の拒否や取消しの基準等に関する規定の整備について

(1)免許の拒否や取消し等の基準等について
 本年の道路交通法の改正により、障害者に係る免許の欠格事由が廃止され、その一方で、次の病気にかかっている者や身体の障害がある者等について免許の拒否や取消し等の処分ができることとされましたが、その処分の基準等について定めることとします。
 ?@ 幻覚の症状を伴う精神病
 ?A 発作により意識障害又は運動障害をもたらす病気
 ?B その他自動車等の安全な運転に支障を及ぼすおそれがある病気
 ?C 痴呆
 ?D 目が見えないことその他自動車等の安全な運転に支障を及ぼすおそれがある身体の障害
 ?E アルコール等の中毒者
(2)臨時適性検査に係る規定の整備について
 ?@ 運転免許試験に合格した者に対して臨時適性検査を行う場合の免許の保留等の基準について定めることとします。
 ?A 一定の病気にかかっている者について、公安委員会は、必要に応じ期間を定めて、臨時適性検査を行うことができることとします。
 ?B 臨時適性検査をやむを得ない理由がなく受けない者に対する免許の取消しや効力の停止の基準について定めることとします。
(3)免許申請書等への病状等の記載の義務付けについて(府令事項)
 免許申請書や更新申請書に、病状等(例えば、過去に一定の病気にかかったことがあるかどうか、病状が悪化したかどうか)についての記載を求めることについても併せて検討しています。

別 紙 2

 「運転免許の処分基準等の見直し素案」に対する意見の募集について

1 免許の欠格期間及び点数制度の見直しについて
 飲酒運転や無免許運転などの悪質・危険な運転によって引き起こされる悲惨な交通事故が後を絶たず、大きな社会問題となっている状況を受け、免許の欠格期間及び点数制度について、以下のように見直しを行うこととします。
 注:免許の欠格期間と点数制度については、「点数と行政処分の基準」で紹介しておりますので、御覧ください。
<備考>
 飲酒運転や無免許運転などの悪質・危険な運転によって引き起こされる悲惨な交通事故が後を絶たない状況を受け、平成13年6月には道路交通法が改正され、飲酒運転や無免許運転などの悪質・危険な運転行為等に対する罰則が引き上げられました。

 道路交通法改正案の審議において、衆議院及び参議院の内閣委員会は、酒酔い運転等悪質な違反行為に対する点数や免許の取消しの場合の欠格期間の在り方等について更に検討を行うとともに、それにより人を死傷させる行為の厳罰化について、関係行政機関の間において速やかに検討を行い、その法制化に向けて、所要の措置を講じることを求める旨の道路交通法の一部を改正する法律案に対する附帯決議を行いました。

 「運転免許制度に関する懇談会」(座長:石井威望・慶応義塾大学教授)は、本年7月に「運転免許の欠格期間及び点数制度についての提言」(以下「提言」といいます。警察庁ホームページに掲載中)を警察庁に提出しました。



(1)極めて悪質な違反をして死亡事故を起こした者に対する欠格期間は、1回目の取消しであっても、5年の期間が指定できるようにします。(例えば、?@故意により人を死傷させた場合、?A酒酔い運転をして専らその者の責任で人を死亡させた場合については、5年の欠格期間が指定できるようにします。)
  また、現在、飲酒運転等悪質・危険な運転をして交通事故を起こした者に対する刑罰の強化が検討されています(注)が、この刑罰に該当する罪を犯した者については、上記の?@や?Aの場合と同様にすることについて検討します。
<備考>
 免許を取り消された者には欠格期間が指定されますが、現在の制度では、取消歴のない者の場合は最長でも3年とされています。(過去5年以内に取消歴がある者については、最長5年とされています。)

 最も悪質な違反である酒酔い運転を行い、専らその人の責任で死亡事故を起こした者でも、現在、欠格期間は2年です。

 道路交通法改正の際のパブリックコメントにおいて、改正の内容とは直接関係しないものの、免許の欠格期間を延ばすべきではないか、あるいは、免許の取消し等を厳格にするべきではないかといった意見が寄せられています。(提言資料5参照)
 また、昨年の12月から本年1月にかけて、約1か月間、欠格期間の延長について国民の方々から意見を伺ったところ、86件の意見のうち、賛成が69件、反対が14件でした。(主な賛成意見としては、「繰り返し違反している人には厳しくするべき」、「悪質者は初回でも5年。取消期間中の無免許は10年」、主な反対意見としては、「長い間運転できないのは酷。無免許で運転する人が増える。」といったものです。)(提言資料3参照)

 諸外国における欠格期間について
○ イギリス
 運転禁止期間は通常6か月ですが、違反内容に応じてより長期間(10年以上又は終身の場合あり。)運転が禁止されることがあります。
○ ドイツ
 欠格期間は通常6か月から5年とされていますが、2回以上取消しを受けた者で免許を再取得しようとするもの等は、医学的心理学的検査に合格しなければ再取得できないこととされています。
○ フランス
 欠格期間は通常6か月とされていますが、一定の罪については5年以内の欠格期間が指定されることとされています。
 提言「2 運転免許取消し後の欠格期間について」参照


(注)
法制審議会は、アルコールや薬物の影響により、又は運転に必要な技能を有しないため、正常な運転が困難な状態で自動車を走行させ、よって人を死傷させた者等に対する罰則の整備を内容とする答申を9月5日に行いました。



(2)
死亡事故を起こした場合の点数を引き上げ、原則として、免許を取り消すことができることとします。(ただし、事故を起こした者に責任がない場合や責任が極めて軽微な場合には取り消さないこととします。)
<備考>
 現在の制度では、違反行為をして死亡事故を起こした場合は違反に付する基礎点数に9点が付加されるのにとどまるため、死亡事故を起こした場合でもほとんどの場合、免許の効力の停止処分にとどまることになります。(事故を起こした者に専ら責任がある場合は、13点が付加されるので免許の取消しとなります。)

 事故の場合の付加点数は、その際に違反がなければ付されず、また、例えば、死亡事故を起こした場合でも、その事故について死亡した側に専ら過失があるときは、点数は付されません。

 免許の取消しの点数に達した場合であっても、公安委員会は、当該違反行為に現れたその者の将来における危険性の程度等を考慮して、免許を取り消さない(免許の効力の停止に軽減する)ことが可能です。(仮に、今回死亡事故を起こした場合の点数を引き上げ、免許を取り消すことができることとした場合においても、このことに変わりはありません。)

 昨年の12月から本年1月にかけて、約1か月間、死亡事故、重障害事故に対する点数の強化について国民の方々から意見を伺ったところ、73件の意見のうち、賛成が51件、反対が12件でした。(主な賛成意見としては、「悪質なドライバーが死亡事故を起こしても13点は少なすぎる」、「どのような事情があるにせよ死亡事故を起こした者の行政処分が酒酔い運転より軽いのは理解に苦しむ」、主な反対意見としては、「事故の実態は様々なので点数を著しく高くするのは酷」といったものです。)(提言資料3参照)

 死亡事故及び重度の後遺障害を与えた場合には、原則として免許取消しとし、悪質な者は再取得までの期間を長期化すべきとであるいった旨の要望が全国交通事故遺族の会から寄せられています。(提言資料11参照)

 提言「4 死亡重傷事故の点数について」参照




(3)交通事故の被害者に重度障害が残る事故や治療期間が3か月以上である事故に対する付加点数については、新たに区分を設け、重くすることとします。
<備考>
 現在の制度では、治療期間が30日以上の傷害事故の場合であれば、例えば、四肢が欠損したり、麻痺等の後遺症が残るといった重障害事故の場合であっても、後遺症の全くないものと同様、一律に6点(専ら責任がある場合は9点)が付されることとされています。

 昨年の12月から本年1月にかけて、約1か月間、死亡事故、重障害事故に対する点数の強化について国民の方々から意見を伺ったところ、73件の意見のうち、賛成が51件、反対が12件でした。(重障害事故に関する意見のうち、主な賛成意見としては、「死亡事故等の重大な事故に関してはそれだけで取消しになってよい」、「重い後遺障害が残るような大きな事故の場合は、一般の負傷事故とは別にすべき」、主な反対意見としては、「後遺症の問題は民事上の問題であり、免許制度と切り離すべき」「打ち所によって小事故でも大怪我となるので、重度の後遺障害を区分化するのは困難」といったものです。)

 死亡事故及び重度の後遺障害を与えた場合には、原則として免許取消しとし、悪質な者は再取得までの期間を長期化すべきであるといった旨の要望が全国交通事故遺族の会から寄せられています。(提言資料11参照)

 提言「4 死亡重傷事故の点数について」参照



(4)酒気帯び運転(注1)をして事故を起こした場合には取消しの対象とするなど飲酒運転等の点数を引き上げることとします。
  なお、事故防止の観点から、酒気帯び運転の対象の範囲を拡大する(酒気帯び運転の基準数値を引き下げる)ことについても、現在、検討しています(注2)。仮にこの引き下げが行われた場合に、引き下げられた部分に該当した者に対しては、現在の酒気帯び運転の点数(6点)を超えない点数を付することとする考えです。
<備考>
 現在の制度では、酒気帯び運転に付する基礎点数は免許の効力の停止の対象となる6点にとどまっており、酒気帯び運転を2回繰り返した場合や事故(死亡事故や責任の重い重傷事故の場合を除く。)を起こした場合も免許の取消しの対象とならないこととされています。この酒気帯び運転の点数を仮に13点に引き上げた場合、人身事故を起こした場合における違反点数に付加する点数が2点以上とされていることから、両者を合わせて15点以上となり、その結果、酒気帯び運転をして事故を起こした場合にはすべて免許の取消しの対象となります。

 飲酒運転(酒酔い運転及び酒気帯び運転)の点数のほか、今回の道路交通法の改正で罰則が引き上げられた麻薬等運転や共同危険行為等禁止違反等の悪質な違反の点数についても所要の引き上げを行うことを考えています。

 ドイツにおいては、飲酒運転を行った場合は、通常、自動車の運転に不適格であるとみなされ、免許が取り消されています。

 提言「5(1)飲酒運転等に付すべき点数について」参照
(注1)
酒気を帯びて車両等を運転することは禁止されています。ただし、刑罰の対象となるのは、現在、0.25mg/l(呼気)又は0.5mg/ml(血液)以上のアルコールを身体に保有する状態で運転した場合とされています(このような場合を酒気帯び運転と呼んでいます。)。一方、アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態で運転を行うこと(いわゆる酒酔い運転)については、酒気帯び運転より重い刑罰が科され、また、点数も現在15点とされています。

(注2)
酒気帯び運転の基準に満たないアルコール(0.25mg/l(呼気)又は0.5mg/ml(血液)未満)を保有する状態での運転による交通事故が増加傾向にあるという現状があります。



(5)無免許運転については、他の違反行為と合算して評価することとします。
<備考>
 現在の制度では、違反点数について、複数の違反をした場合にはその最も高い点数のみで評価することとされています。(例えば、無免許で40?qの速度超過をした場合と無免許運転のみをした場合では、現在の制度上は同じ12点と評価されています。今回の改正が行われれば、前者は現在の点数では21点となり、免許の拒否又は取消しの対象となります。)

 無免許運転のほか、大型自動車等無資格運転や仮免許運転違反も、運転の前提となる資格がないのに運転をしたという違反であり、無免許運転と同様に、他の違反と合算して評価することとします。

 提言「5(3)複数違反の評価について」参照



(6)1年間無事故無違反の場合の点数累積等の特例(1年間無事故無違反であれば、点数制度上、それ以前の違反や免許停止歴をなかったものとして扱うという特例)の要件となる無事故無違反期間について、現在、免許停止期間や免許が失効した期間も含めて1年間としていますが、これを、運転が可能な期間に限る(運転が可能な期間が1年間以上あり、かつ、その期間無事故無違反である場合に限る)こととします。
<備考>
 提言「3 点数累積等の特例について」参照

 1年間無事故無違反の場合の点数累積の特例制度自体については、全国交通事故遺族の会から、その廃止を要望する意見が警察庁に寄せられているほか、昨年12月から本年1月にかけて、約1か月間、この制度の廃止について国民の方々から意見を伺ったところ、65件の意見のうち、賛成が28件、反対が30件でした。このように、1年間無事故無違反の場合の点数累積の特例制度の廃止の要望があるところですが、今回の道路交通法施行令改正の対象としない考えです。(提言資料3及び11参照)






2 病気等に係る免許の拒否や取消しの基準等に関する規定の整備について
 本年6月の道路交通法の改正により、精神病者、知的障害者、てんかん病者、目が見えない者、耳が聞こえない者、口がきけない者その他一定の身体の障害のある者等は、免許を受けることができない(運転免許試験(以下「試験」といいます。)の受験資格がなく、免許取得後に該当することとなった場合には取り消さなければならない)とされていたのを改め、知的能力や身体的能力については試験で確認することとされました。
 一方、試験で確認することが困難な、幻覚の症状を伴う精神病であって(1)政令で定めるもの、発作により意識障害又は運動障害をもたらす病気であって(1)政令で定めるもの、その他自動車等の安全な運転に支障を及ぼすおそれがある病気として(1)政令で定めるものにかかっている者等に対しては、都道府県公安委員会(以下「公安委員会」といいます。)は、(1)政令で定める基準に従って、免許の拒否や取消し等ができることとされました。
 また、これらのほか、痴呆である者や、目が見えないことその他自動車等の安全な運転に支障を及ぼすおそれがある身体の障害として(1)政令で定めるものが生じている者については、(1)政令で定める基準に従って、免許の取消しや効力の停止ができることとされました。


(1)免許の拒否や取消し等の基準等について
 上記のように、一定の病気にかかっている者等に対しては、免許の拒否や取消し等の処分を行うことができることとされ、一定の身体の障害が生じている者等については、免許の取消しや効力の停止ができることとされましたが、これらの処分の基準等を以下のように定めることとします。
<備考>
 免許に係る処分としては、試験に合格した者に対する免許の拒否や保留の処分や、免許を受けた者に対する免許の取消しや効力の停止の処分があります。免許の拒否とは、試験に合格した場合であっても、その者に対して免許を与えないことをいい、免許の保留とは、6月を超えない範囲内で公安委員会が指定した期間、試験に合格した者に免許を与えることを留め置くことをいいます。また、免許の取消しとは、免許を受けている者の免許を取り消すことをいい、免許の効力の停止とは、6月を超えない範囲内で公安委員会が指定した期間、免許を受けている者の免許の効力を停止することをいいます。また、免許を拒否した場合や取り消した場合においては、公安委員会は、5年を超えない範囲内で免許を受けることができない期間を指定するものとされています。


?@ 幻覚の症状を伴う精神病関係
 精神分裂病にかかっている者については、以下のようにします。
 寛解の状態(残遺症状がないか極めて軽微なものに限ります。)その他の自動車等の安全な運転に支障を及ぼすおそれがないことが明らかである場合については、処分の対象としません。

 6月以内にアの状態になると見込まれる者については、免許の保留や効力の停止を行うこととします。

 ア及びイ以外の者については、免許の拒否や取消しを行うこととします。
<備考>
 この結果、これまでは、精神分裂病にかかっている者については、一律に免許を受けることができないこととされていましたが、アの者については、免許を受けることができることとなります。



?A 発作により意識障害又は運動障害をもたらす病気関係
ア てんかん関係
 てんかんにかかっている者については、以下のようにします。

(ア)
?T てんかん発作が、睡眠している間に限って起こる場合や自動車等の安全な運転に支障を及ぼすおそれがないことが明らかな単純部分発作に限られる場合については、処分の対象としません。
?U また、てんかん発作が過去2年以内(注)に起こったことがない者で、今後当該発作が起こるおそれがないと認められるものについても、処分の対象としません。

(イ) (ア)に該当しない者のうち、てんかんに係る発作が過去2年以内(注)に起こったことがない者で、6月以内に当該発作が起こるおそれがなくなると見込まれるものについては、免許の保留や効力の停止を行うこととします。

(ウ) (ア)及び(イ)以外の者については、免許の拒否や取消しを行うこととします。
<備考>
この結果、これまでは、てんかんにかかっている者については、一律に免許を受けることができないこととされていましたが、(ア)の者については、免許を受けることができることとなります。(なお、(ア)?Uに該当する者は、相当数に上るものと見込まれます。)

(イ)は、薬の服用により発作が抑制されている者が、薬の量を減量し、又は服薬を中止する場合、一定の期間、発作が再び起こることがないかどうかについて確認する必要があり、このような場合に免許の保留や効力の停止を行うことを想定しています。これは、日本てんかん学会が、「てんかんをもつ人における運転適性の判定指針(2001年)」において、「医師の指示により抗てんかん薬を減量(中止)する場合には、薬を減量する期間及び減量後の3月間は自動車の運転は禁止する」としていることを踏まえ、行おうとするものです。
(注)
現在の規定では、免許の拒否や取消し等を免許ごとに行うことは想定されていないため、上記のように一律に2年とする方針ですが、今後、大型免許や第二種免許についてより長期の期間とすることを検討します。


イ ナルコレプシー関係
 ナルコレプシーにかかっている者については、以下のようにします。
(ア) 睡眠発作を起こすおそれがない場合については、処分の対象としません。

(イ) (ア)に該当しない者のうち、6月以内に、睡眠発作が起こるおそれがない状態になることや回復することが見込まれる者については、免許の保留や効力の停止を行うこととします。

(ウ) (ア)及び(イ)以外の者については、免許の拒否や取消しを行うこととします。
<備考>
 ナルコレプシーとは、昼間に起こる著しい入眠傾向(睡眠発作)等を主な症状とする病気であるとされています。運転中にこのような睡眠発作が起こった場合においては、自動車等の運転が全く不可能となり、道路交通に著しい危険を生じさせると考えられることから、睡眠発作を起こすおそれがあるナルコレプシーにかかっている者について、処分の対象としようとするものです。

 国際的にも、ナルコレプシーにかかっている者について、免許の取消し等の処分の対象とされている場合がみられます。(例えば、オーストラリアの運転適性基準では、ナルコレプシーにかかっている場合については、普通自動車や自動二輪車であっても運転を認めないこととされています。)


ウ 座っている場合に起こる失神関係
 失神にかかっている者については、以下のようにします。
(ア) 座っている場合に失神が起こるおそれがない場合については、処分の対象としません。

(イ) (ア)に該当しない者のうち、6月以内に、座っている間に失神が起こるおそれがない状態になることや回復することが見込まれる者については、免許の保留や効力の停止を行うこととします。

(ウ) (ア)及び(イ)以外の者については、免許の拒否や取消しを行うこととします。
<備考>
 失神とは、全脳虚血による一過性の意識障害と定義され、脳灌流圧(血圧)の一過性の低下により起こるものとされています。運転中に失神が起こった場合においては、自動車等の運転が全く不可能となり、道路交通に著しい危険を生じさせると考えられることから、自動車等を運転している場合のように、座っている間に失神が起こるおそれがある者について、処分の対象としようとするものです。

 失神の中で最も多いのが「立位状態で突然倒れるような失神」(いわゆる立ちくらみ)ですが、このような失神の場合については、当然、処分の対象とはなりません。

 国際的にも、多くの国で、失神を起こす者や失神を起こす原因となっている不整脈がある者について、免許の取消し等の処分の対象とされている例があります。


エ 低血糖による意識障害を伴う糖尿病関係
 糖尿病にかかっている者については、以下のようにします。
(ア)
?T 低血糖による発作により起きて活動している間に意識障害(意識を喪失してしまうようなこと)が生じるおそれがない場合については、処分の対象としません。
?U 過去1年以内に、低血糖による発作により起きて活動している間に意識障害を生じたことがなく、かつ、今後当該発作が起こるおそれがないと認められる者については、処分の対象としません。

(イ) (ア)に該当しない者については、免許の拒否や取消しを行うこととします。
<備考>
 運転中に低血糖による意識障害が起こった場合、自動車等の運転が全く不可能となり、道路交通に著しい危険を生じさせると考えられることから、低血糖による意識障害を起こすおそれがある糖尿病にかかっている者について、処分の対象としようとするものです。なお、1年間に2、3件程度、低血糖による意識障害を原因とする死亡事故が発生しています。

 国際的にも、多くの国で、低血糖により意識障害をもたらすおそれがある糖尿病にかかっている者について、処分の対象とされています。

 低血糖により発作を起こす者であっても、意識障害に至るものでなければ処分の対象となりません。したがって、自ら血糖を適切にコントロールできるのであれば、処分を受けることはありません。


?B その他自動車等の安全な運転に支障を及ぼすおそれがある病気関係 
ア 躁うつ病等関係
  躁うつ病等にかかっている者については、以下のようにします。

(ア)
?T 躁うつ病や躁病、あるいは中等症又は重症のうつ病にかかっている者については、寛解の状態(残遺症状がないか極めて軽微なものに限ります。)その他の自動車等の安全な運転に支障を及ぼすおそれがない状態である場合については、処分の対象としません。
?U 軽症のうつ病にかかっている者で特段の自動車等の安全な運転に支障を及ぼすおそれがある症状が現れていない場合は、処分の対象としません。

(イ) (ア)に該当しない者のうち、6月以内に、寛解の状態(残遺症状がないか極めて軽微なものに限ります。)その他の自動車等の安全な運転に支障を及ぼすおそれがない状態になることや回復することが見込まれる者については、免許の保留や効力の停止を行い、それ以外の者については、免許の拒否や取消しを行うこととします。


イ 睡眠時無呼吸症候群関係
 睡眠時無呼吸症候群にかかっている者については、以下のようにします。
(ア) 睡眠時無呼吸症候群が著しい眠気をもたらすものでない場合については、処分の対象としません。
(イ) (ア)に該当しない者については、免許の保留や効力の停止を行うこととします。
<備考> 
 睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中に呼吸が頻繁に停止し、深い睡眠が妨げられることにより、日中の慢性的な眠気を主な症状とする病気であるとされています。また、睡眠時無呼吸症候群は、SAS(Sleep Apnea Syndrome)とも呼ばれています。
 睡眠時無呼吸症候群について、免許の拒否や取消しの処分を行わないのは、睡眠時無呼吸症候群は適切な治療を受ければ6月以内に大半が治癒し、あるいは日中に著しい眠気が生じることがなくなるからです。


ウ その他自動車等の安全な運転に支障を及ぼすおそれがある病気関係
 ア及びイのほか、自動車等の安全な運転に支障を及ぼすおそれがある病気にかかっている者については、以下のようにします。
6月以内に自動車等の安全な運転に支障を及ぼすおそれがない状態になることや回復することが見込まれない者については、免許の拒否や取消しを行い、それ以外の者については、免許の保留や効力の停止を行うこととします。
<備考>
 ウの病気としては、迫害妄想、誇大妄想等を特徴とする「持続性妄想障害」、精神分裂病の症状を示しているものの、精神分裂病とは断定できない状態にある「急性一過性精神病性障害」等や心臓等に激烈な疼痛発作をもたらし運転を困難にするもの等を想定しています。


?C 痴呆関係
 痴呆である者については、免許を取り消すこととします。
<備考>
 痴呆である者については、免許の拒否や保留の対象としていませんが、これは、痴呆である者が試験に合格することはあり得ないからです。



?D 目が見えないことその他自動車等の安全な運転に支障を及ぼすおそれがある身体の障害関係
 目が見えないことその他自動車等の安全な運転に支障を及ぼすおそれがある身体の障害がある者については、以下のようにします。
 目が見えない者については、免許を取り消すこととします。

 次の?@から?Bまでのいずれかに該当する障害が生じている者については、以下のようにします。
?@ 下肢又は体幹の機能に障害があって腰をかけていることができないもの
?A ?@のほか、ハンドルその他の装置を随意に操作することができないもの 
?B ?@及び?Aのほか、自動車等の安全な運転に支障を及ぼすおそれがあるもの
(ア)その者の身体の状態に応じた条件を新たに付すこと等により、自動車等の安全な運転に支障を及ぼすおそれがない者については、処分の対象としません。
(イ)(ア)に該当しない者のうち、6月以内に、その者の身体の状態に応じた条件を付すこと等により、自動車等の安全な運転に支障を及ぼすおそれがなくなると見込まれる者については、免許の効力の停止を行い、それ以外の者については、免許の取消しを行うこととします。
<備考>
 上記のような身体の障害が生じている者については、免許の拒否や保留の対象としていませんが、これは、一定の身体の障害があるかどうかについては、試験で確認することが可能であり、試験に合格した者について殊更に免許の拒否等の処分を行う必要がないからです。

 イ?Bの身体の障害としては、適性検査の合格基準に達しないような身体の障害(例えば、適性検査における視聴覚等の合格基準に達しないような障害)を想定しています。

 これまでは、両上肢を用いることができず、かつ、下肢のいずれかをリスフラン関節以上で欠いている場合等においては、免許を与えないこととしていましたが、このような障害がある場合であっても、仮に補助手段を用いることにより自動車等を安全に運転することが可能であれば、免許を与えることとします。



?E アルコール中毒等関係
 アルコール、麻薬、大麻、あへん又は覚せい剤の中毒者については、以下のようにします。

 6月を超えない期間内に回復すると見込まれる者については、免許の保留や効力の停止を行い、それ以外の者については、免許の拒否や取消しを行うこととします。




(2)臨時適性検査に係る規定の整備について
?@ 試験に合格した者に対して臨時適性検査を行う場合の免許の保留等の基準について
 本年6月の道路交通法の改正により、試験に合格した者が臨時適性検査の通知を受けた場合には、政令で定める基準に従って、免許の拒否や保留ができることとされましたが、この処分の基準については、以下のように定めることとします。
 試験に合格した者が、臨時適性検査の通知を受けた場合(イで拒否される場合を除く。)には、免許の保留を行うこととします。

 試験に合格した者が、臨時適性検査の通知を受けた者で、当該臨時適性検査を受けないと認めるときには、免許の拒否を行うこととします。



?A 公安委員会が指定する期間を経過するごとに行う適性検査について
 一定の病気にかかっている者(その病気により身体の障害が生じている者を含む。)であっても、(1)で記載したように、免許の拒否や取消し等の処分を行わないことがあります。しかしながら、免許の拒否等の処分を行う必要がない状態にあっても、その後症状が再発したり、また、かかっている病気によっては時間の経過により症状が進行することがあります。このため、道路交通の安全を図る観点から、以下の措置を講じることを検討します。

 次のいずれかに該当する者が、免許の取消し等の基準には該当しないものの、その病状から見て一定の期間を経過するごとに確認する必要があると認められたものである場合には、専門医による診断書が提出された場合を除き、その期間が経過したときに臨時適性検査を行うこととします。
  精神分裂病、てんかん、躁うつ病等にかかっている者
  筋ジストロフィー、パーキンソン病等の時間の経過により症状が悪化するおそれがある病気にかかっている者




?B 臨時適性検査に係る免許の取消しや停止の基準について
 本年6月の道路交通法の改正により、臨時適性検査をやむを得ない理由がなく受けない者に対して、公安委員会は、政令で定める基準に従って、免許の取消しや効力の停止ができることとされましたが、この処分の基準については、以下のように定めることとします。
 臨時適性検査の通知を受けた者が、当該臨時適性検査を受けないと認めるとき(イの場合を除く。)には、その者の免許の効力の停止をすることとします。

 臨時適性検査の通知を受けた者が、以下のような者で、当該臨時適性検査を受けないと認めるときには、その者の免許を取り消すこととします。
(ア) 過去にも、臨時適性検査を受けないで、免許の効力の停止を受け、その効力の停止期間中にそのまま適性検査を受けなかった者であるとき。
(イ) 違反行為をし、当該違反行為をした場合において取消事由に該当することとなったと疑う理由があるとして臨時適性検査の通知を受けた者であり、当該違反行為に係る累積点数が免許の効力の停止の基準に該当する者であるとき。
<備考>
 臨時適性検査とは、試験に合格した者が拒否事由に該当すると疑う理由があるときや免許を受けた者が取消事由に該当することとなったと疑う理由があるときに、公安委員会が専門医により臨時に行う適性検査のことです。



(3)免許申請書等への病状等の記載の義務付けについて(府令事項)
  免許を受けようとする者や免許証の更新を受けようとする者が、(1)の免許の拒否や取消し等の対象となる病気等であるかどうかについて、公安委員会が的確に把握できるようにするため、諸外国の状況を参考として、
 免許申請書や更新申請書に、病状等(例えば、過去に一定の病気にかかったことがあるかどうか、病状が悪化したかどうか)についての記載を求めることを検討しています。
<備考>
※ これは、自動車等の安全な運転に支障を及ぼすおそれがある病気にかかっている者を把握するための方法が現在のままでは不十分ではないかという国民の方々からの意見が寄せられていること(注)を踏まえ、諸外国の制度を参考として行おうとするものです。
(注)
全国交通事故遺族の会から、一定の病気にかかっている者に対して、「免許証取得時(取得者は更新時)に医師の診断書を提出することを義務付ける」べき旨の意見が警察庁に寄せられているほか、昨年12月から本年1月にかけて約1か月間、免許申請時等に病気の申告等を義務付けることについて国民の方々から意見を伺ったところ、37件の意見のうち、賛成が23件、反対が8件でした。
※ 諸外国における運転免許申請時等の運転適性に係る申請書記載事項について
 イギリス
 免許申請書及び更新申請書には、「てんかん発作、めまい、失神、意識喪失等の発作、重大な精神障害等の疾患に罹患し、又は罹患したことがありますか。」といった健康状態に関する質問が記載されており、申請者は質問に答えなければならないこととされています(虚偽記載は罰せられることとされています。)。
 フランス
 免許申請書には、「自分の知る範囲において、運転免許の取得又は保持に不適格であり得ますか。あるいは有効期間の限定された免許の付与につながるような疾患(心臓、視覚、耳鼻咽喉、神経、てんかん、じん臓、糖尿病)にかかっていますか。」といった健康状態に関する質問が記載されており、申請者は質問に答えなければならないこととされています。
 アメリカ(ニューヨーク州)
 免許申請書及び更新申請書には、「痙攣、てんかん、気絶若しくは目眩又は意識喪失を引き起こす症状、心臓病、聴覚障害等の疾患のために、治療を受けたことがあり、又は現在治療を受けていますか。あるいは、これまでにその疾患が悪化しましたか。」といった健康状態に関する質問が記載されており、申請者は質問に答えなければならないこととされています(虚偽記載は罰せられることとされています。)。