2003.04.08

交通安全のスポンサー

ニッポンのお役所は、それぞれが所管する業界を牛耳るためのシステムを、着々と積み上げてきた。 そして、業界に儲けさせて、そこに発生する甘い汁を吸っている。 こうした官と業との癒着によって、業界の利益ばかりが優先され、そして生活者の利益などどうでもよくなるのだろう。

お役所が所管する業界の“違反”は〇×業協会に天下った役人の裁量で治まるようにし、 それでも問題が収まらないときには、お役人が業務停止命令などの行政罰を与えて幕引きを図ろうとする。余程のことがない限り、 それぞれの役所が抱える業界の懲罰が裁判所に委ねられることはない。(参照ファイル→なぜ腐敗はなくならないか?

なお、警察という役所は、交通安全業界を所管しています。 道路標示・標識、交通管制システム(交通情報、信号、先進のITS)、 それから、交通安全教育、運転免許などなど。

さて、業界を潤わせる施策をも正当化するためには、必ず大儀明文が持ち出されます。「公益」「環境」「福祉」、そして「安全」。こうした大儀明文のなかで、警察が持ち出す「安全」は、センセーショナリズムを利用することができます。“悲惨な死亡事故”をアピールすることによって、劇的な広報効果(事業の正当化)をもたらすのである。

センセーショナリズムを利用した警察広報を受けての「警察よ、もっと厳しく取締ってくれ!」という意見は、とても多く感じられる。そこで、センセーショナルな実例を、警察発表とは別の角度から考えてみよう。

レインボーブリッジ 追突され一家5人死亡

レインボーブリッジで追突 一家5人が死亡

13日正午過ぎ、東京都港区海岸3丁目の首都高速道路レインボーブリッジ上り車線で、大阪府大東市扇町、運転手仲本正容疑者(37)の大型トラックが前にとまっていた千葉県銚子市笠上町、銚子市立第1中学高教諭・松崎雅行さん(34)の乗用車に追突し、この2台を含めて計4台が関係する玉突き事故になった。松崎さんの乗用車は大型トラックに押しつぶされて大破し、松崎さんら乗っていた5人全員が頭を強く打つなどして死亡した。

警視庁高速隊は大型トラックのわき見運転が原因とみて、仲本運転手を業務上過失致死と道交法違反の疑いで現行犯した。

死亡したのは、松崎さんと妻の悦子さん(34)、長男大和ちゃん(7つ)、長女愛ちゃん(4つ)、次男優ちゃん(1つ)の一家5人。仲本運転手にかがはなかった。
調べでは、渋滞の最後尾にいた松崎さんの車に仲本運転手の大型トラックが時速約50キロで追突した。松崎さんの車は前に停車していた大型トラックにぶつかり、大型トラックはさらに前のワゴン車に玉突き衝突した。松崎さんの乗用車は仲本運転手の大型トラックの下敷きになってつぶれ、東京消防庁のレスキュー隊が車両を切断して救出作業に当たった。大型トラックがブレーキをかけた痕はほとんどなかったという。

仲本運転手は「景色にみとれ、わき見運T年をしてしまった」という。仲本運転手の車は8トン車で、江東区のふ頭で約9トン分のコンピューターを積み、大阪へ向かう途中だった。前方のトラックは約8トンの裁断紙を積んでいた。

現場はレインボーーブリッジの中央付近で、見通しのより直線道路。ドライバーが臨海副都心や東京湾の景色を眺めようとして速度を緩めるため、渋滞することが多い場所という。
松崎さんは14日に予定されていた親族の結婚式に出席するために休暇をとり、家族5人で銚子市の自宅から世田谷区の親類宅に向かう途中だったという。

この事故のため、同上り線は午後4時まで通行止めになった。

「明るい一家だったのに…」涙ぐむ知人

死亡した松崎雅行さんが勤務していた銚子市立第一中学校によると、この日は、以前から「身内の結婚式のため、年休をとらせてほしい」と休暇願が出されていたという。

雅行さんは音楽の担当で、2年生の担任と吹奏楽部の顧問を受け持っていた。田村一男教頭は「本人も中学時代にブラスバンドで活躍し、赴任してきてから熱心に指導をしていた。実直な人で本当に残念だ」と話していた。

長女の愛ちゃん(4つ)が通っていた保育所の保母は、「お父さんもお母さんも園の活動に協力的で、運動会のようすをビデオで撮影したり、遠足に携帯用の楽器を持参して演奏したり、子どもたちを楽しませてくれた。うらやましほど明るく楽しそうな一家だったのに」と涙ぐんでいた。

1998年02月14日朝日新聞

テレビで事故状況の映像を見たが、私の知る中では最も悲惨な交通事故だ。

こうした大型トラックによる“悲惨な死亡事故”の多発を受けて、 国土交通省は、大型トラックにリミッター装着の義務化を打ち出した。

一方、警察がトラックを対照とした規制/取締りの強化をすることはない。 警察がするのは、全体の規制強化(大きな網)と、乗用車やバイクをターゲットにした取締りの強化だ。

なお、取締りの多くは、各種の交通安全運動期間に行われている。 こうしたキャンペーンには、必ず全国または各地にちらばる無数のトラック協会がスポンサーになります。もちろん、これら全国に散らばるトラック協会には、多数の警察職員が天下っています。

“悲惨な事故”が減らない本当の原因は、こうした「癒着の構造」にあるのだろう。

ご興味のあるかたは、 「奈良県警汚職事件」をキーワードとして検索してみてください。警察とトラック業界と蜜月関係の一端を垣間見ることができるはずだ。