Public Bureau of Inspection
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駐車規制の国際比較

日本の駐車規制(ゾーニング)は、すべての市街道路に駐車禁止という大きな網をかけて、その中に駐停車規制という小さな網をかけるという手法がとられている。

ゾーニング ZONING

区画(ゾーン)毎の規制を指定する作業

パーキングメーターの設置された場所も駐車禁止という大きな網の中にある。だからメーター超過は駐車違反として取締られるのである。

規制だけでなく、取締りにもメリハリはない。その結果、の違いは〝捕まったときのペナルティが違う〟という認識がされているようだ。

一方、欧米都市の駐車規制(ゾーニング)は、日本よりずっとメリハリが利いている。

カナダ

No Stopping
No Parking
の日本と同じ2種類であるが、ゾーニングにはメリハリがある。そして、ドライバーも規制に従っている。

Paking Zone

アメリカ

信号待ちや緊急停止を除き、STOPしてはならない。

一時的な人の乗り降りを除き、STOPしてはならない。

一時的な人の乗り降りや荷物の積み下ろしを除き、駐車してはならない。

指定された時間帯において、2時間まで駐車可能

イギリス

ロンドンにはCPZ(コントロールド・パーキング・ゾーン)と呼ばれるエリアがある。CPZ内では、駐車の可否が細かくコントロールされている。

Wandsworth区のCPZ(英語)

またCPZ外の場所も、路面のマーキングによって規制状況が明示されている。

日本のように、警察官や駐車監視員がメジャーを取り出して、「交差点から始端垂直方式で5メートルにかかっているから法定駐停車違反!」などといったナンセンスなやり方はしない。

ロンドンと東京の駐車場比較

メリハリのない日本の駐車規制


欧米で本当に迷惑な場所は〝No Stopping〟とされており、ドライバーは自発的にルールに従っている。規制に合理性があるから、ドライバーの理解も得られているのだろう。

一方、日本ではの違いは、それほど重要視されておらず、「駐車違反はゆるさない!」と取り締まりの正義ばかりがアピールされている。現実の規制状況を欧米都市と比較すると、日本の駐車規制のメリハリのなさは顕著である。

こうした違いが生まれるのは、欧米ではそれぞれの都市がゾーニングを行っているのに対し、日本では警察がゾーニングを行っているからだろう。

強い警察を理念とする日本警察にとっては、大きな網をかけて、ビシバシ取り締まった方が警察の存在価値をアピールしやすいのである。

欧米のように合理的な規制で秩序が安定してしまったら、警察の存在価値を印象付けることはできない。だから、合理的な規制によって秩序を不安定にし、そして偉大なる警察力(取締り)によって平和がもたらされた、というスジ書き通りにしたいのだろう。

これまでの駐禁取り締まり

警察庁は、何の根拠も示さずに「悪質性・迷惑性・危険性の高い駐車違反を重点に取り締まった」と発表し続けてきた。

警察発表のウソ

なんの根拠もない警察発表に便乗して、少し主観で言わせてもらえば、現場の警察官による駐禁取り締まりは次のような特徴があった。

  1. きわめて恣意的
  2. 天気の悪い日は取り締まりをしない
  3. 決まった場所でしか取り締まらない

捕まらない方法

このケース(↑)のように、本当に悪質で迷惑な違反車のドライバーは、すぐ近くにいるものだ。

これまで警察が即検挙をしなかった理由

なお、日本のようにチョークでマークして、一定時間待つような緩慢なやり方をしていた国はほかにない。

このように警察発表とドライバーが目にする駐禁取締りにはあまりにも大きな開きがある。立派な取締りしているかのように広報しながら、現実はノルマを追いかけて、取り締まりやすい違反車両を片っ端から検挙しているようにしか見えないのである。

このような執行部隊の取り締まり体質が嫌われて、一部のドライバーは捕まらない方法で駐車するようになったのだろう。

捕まらない方法とは、迷惑だろうがなんだろうが、目的地のすぐそばにクルマを寄せることだ。クルマの近くにいれば警察には捕まらないからだ。

取り締まりのための放置違反

2006年6月、駐禁取締りの規制と取締りが強化された。法改正によって設置された駐車監視員にできるのは、放置違反の確認作業だ。によって取り締まりのターゲットを区別する様子はまったく報道されていない。

8種類の駐車違反

  法定 指定
駐車禁止 1.放置
2.非放置
3.放置
4.非放置
駐停車禁止 5.放置
6.非放置
7.放置
8.非放置
詳しくはコチラ

つまり、もともとメリハリのないを区別することなく、放置違反を厳しく取り締まろうというのが今回の法改正である。

しかし、ただでさえ規制にメリハリがない上に、放置違反だけを取り締まってもうまくいくはずはないだろう。

少なくとも、ゾーニングの意味が希薄で、取り締まりの必要性ばかりが露骨にアピールされる日本のやり方は、明らかに欧米の駐車マネジメントとは異なっている。

警察が牛耳る交通行政

欧米都市では、都市ごとに総合的な駐車マネジメントが行われている。

一方、ニッポンの都市では、警察の権限が大きく、市長も県知事も警察に対する実質的な権限はない。

警察と地方自治体の関係

鳥取の乱

<鳥取県>

新しい駐禁取り締まりがスタートした2006年6月1日、鳥取県の片山知事は定例の記者会見で次のように語った。

「全国一律の法律でやること自体、おかしい。東京の銀座と地方都市とを同じ基準で律するということ自体、無理がある」

<鳥取市>

翌日の6月2日、鳥取市は駐禁取り締まり強化に対する市民アンケートをとり始めた。(→日本海新聞

市民参画課(当時)に電話で聞くと、「県警からは事前の協議も相談もなかった…」と困惑している様子。

鳥取警察署によれば、鳥取市内のガイドラインは鳥取県警本部が決めたとのこと。そこで鳥取県警本部交通指導課シバタ氏に聞くと、事前に協議したという。詳しく聞くと、2月17日の会議で市の担当者にガイドラインの内容を伝えたのだそうだ。

さらに突っ込んで聞くと、その会議は、県警の参加しない交通担当者会議だという。県警が参加しないのに協議ができるはずがない。

つまり鳥取県警は、鳥取市との事前協議さえせずに、取り締まり強化を一方的に実施したのである。

鳥取市の意見取りまとめ結果

警察が地域の声を聞くプロセス

最重点地域の指定を受けた鳥取駅周辺などでは、路上駐車が減ると同時に利便性が失われ、そして商店街から客が離れていった。

悲鳴を上げた商店街は、福祉関係者や商工会議所らとともに、「最重点地域・路線の見直し」などを求める要望書を鳥取県警に提出した。

要望書の提出を受けた鳥取県警は、ようやく鳥取市などと協議を行い、鳥取駅周辺などを「最重点地域・路線」ではなく「重点地域」に引き下げることを決定した。

(2007年5月)

一方通行とパーキングメーター

欧米各都市では、一方通行が多用されており、日本とは比較にならない数のオンストリートパーキングが存在する。
かつては、ニッポンでも一方通行とパーキングメーターを活用した欧米型のまちづくりがなされていた。
札幌・すすきの、宮城・国分町、東京・銀座、横浜・関内、名古屋・栄町――etc.
それが現在では、窮屈な相互通行を強いるようになっている。

これまでの駐車対策

駐車対策を都市の課題として解決してきた欧米各都市に比較すると、1980年代までの日本は、都市のインフラとしての駐車対策におそろしく消極的だった。ほとんど何もしなかったといってよいかもしれない。

立派な庁舎はつくっても、自治体がパブリック・パーキング(公共駐車場)を整備するケースは皆無に等しかった。当時の大蔵省には、税制面から駐車場を増やす発想もなかった。これは現在もまったく変わらない。そして当時の建設省はというと、デベロッパーや重工業が儲かる都心のプライベート・パーキング(付置義務駐車場)へのてこ入ればかりだった。

そんな状況でも都心に時間貸し駐車場ができたのは、駐車ニーズに対しビジネスチャンスが見出されたからである。そしてコインパーキングが出現するまでのあいだ、時間貸し駐車場の料金体系は無秩序だった。

1998年当時の札幌の駐車事情

警察はというと、すべての道路を(うち一部区間を)としてきた。多くのドライバーの目には、とうてい実態に即した規制には見えなかったはずだ。

あそこは停められる、が「(違反だけど)迷惑にならない」を意味するようになったのは、すべての道路が駐(停)車禁止だからだろう。

なお、一部の区間には、の上にパーキング・メーター/チケットが設置されている。これらパーキング・メーター/チケットの実務上の設置権限は、かつて警察署長にあった。高級クラブや風俗店の立ち並ぶ繁華街を中心にパーキングメーターが設置されたのは、警察署長と風俗/飲食業界に持ちつ持たれつの関係があるからだろう。

取り締まりのウラ表

お役所の駐車場ビジネス

代表的な公益法人

(財)空港環境整備協会

羽田をはじめ、全国23の空港駐車場の貸付を受けている。

(財)東京都道路整備保全公社

収益性の高い都心の駐車場を独占的な運営を任されているにもかかわらず。東京都は貸付料を半額に免除している。

(財)駐車場整備推進機構

地味な財団であるが、ハコモノ駐車場を推進するフィクサーである。

道路公団のラストエンペラーとなった藤井元総裁をはじめ、多数の事務次官経験者や、警察庁幹部が天下っている。

ハコモノ駐車場と情報土木

駐車対策に消極的だった日本は、平成の時代に入ってから積極的な対策を行うようになった。それがハコモノ駐車場である。まず駐車場の需要の高い空港駐車場から始まり、現在では、国も地方も大量のハコモノ駐車場を供給している。

こうしたハコモノ駐車場の多くは、○×協会といった公益法人や第三セクターに運営がゆだねられている。もちろん○×協会には、天下りの指定席がある。

それらハコモノ駐車場の多くには、潤沢な道路特定財源、つまりドライバーの払った税金が注がれている。その一方、運営をまかされた○×協会は、驚くほど安い場所代しか払っていない。なかにはタダで借りているケースも多く存在する。例を挙げると、横浜市緑の協会(元は公園協会)という財団法人は、公園駐車場などで11億円の駐車料金収入をあげた(H16実績)が、おどろくことに横浜市はこれらの駐車場をタダで運営させており、市には1円も入っていない。そのかわり財団の常勤役員は、市OBの指定席となっている。このような公園協会やお役所の駐車場ビジネス(湘南海岸編)に示したような半官半民の外郭団体は、無数に存在する。

土建国家のほこさき

諸外国と比較すると、あきらかに日本は有料道路が多い。しかも、料金は恐ろしく高い。

こうした高速道路や各種有料道路の運営をゆだねられた半官半民の組織では、お役所のOBが絶大な影響力を持っている。そして現在、お役人たちの目は、駐車場に向けられている。

大きく違うのは、高速道路が建設一家だけの事業であったのに対し、駐車場は警察一家がバックアップしていることだ。警察一家は、駐禁取締りの大儀を強固なものとし、主導権を握っている交通情報ビジネスを拡大させることができる。さらに、ビルメンテナンスに拡大しつつある警備業界を後押しすることも可能だ。

このように建設一家と警察一家が一枚岩となって事業を推進するのは、ITS(高度道路交通システム)による関連事業の拡大を見込んでいるからあである。

通行料にプラスして駐車料金を負担させられるドライバーは泣くしかないだろう。一方、リスクのないビック・ビジネスを手中にするお役人たちは笑いが止まらないに違いない。

なにしろ駐車場ビジネスは、高速道路ビジネスを凌駕する市場規模になり得るからだ。

駐車場COMPLEX - 禁断の公共駐車場