平成14年4月21日 原告作成
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平成13年(ワ)第15800号 損害賠償請求事件

陳述書

平成14年3月17日

東京地方裁判所民事第18部ろB係御中

被告本人 小谷洋之


 私は、平成13年(ワ)第15800号損害賠償請求事件に関して、次のとおり 陳述致します。

第1 私がホームページの管理人を引き受けた経緯

1 間題となっているBBSの置かれたホームページ「月刊交通違反 on the web」 の運営主体は、94年10月に被告の今井氏が発起人となって発足したグルーブ「Traffc Isues Now」(略称、TIN)です。
 TINは、「身近な交通違反&取締りをとおしで、本当に安全で円滑で公正な
交通社会を考え直していこう」という目的のもと、その目的におおむね沿って考えて行動(運転)している者数名が、原則として月1回集まり、情報交換、雑談等するという形の、ゆるやかなグループです。

2 1998年暮れのTIN月例ミーティングにおいて参加者から、社会のIT化を受けて「月刊交通違反」をインターネット上で展開すべきだとの意見が出ました。
 これについて参加者の反対はなく賛同を得たことから、開設の準備が始められました。ところが、ホームページ「月刊交通違反 on the web」を立ち上げることが決まったものの、当時のTINの月例ミーティングの常連参加メンバーの中で、ホームページの作成に必要なパソコン技術を持ち合わせている者がいませんでした。
 そこで、個人の趣味でホームページ作成技術の学習をしていた私が、無料ホームページ領域のレンタル業者geocitiesと契約し、原稿として投稿された文書をインターネット上で閲覧できる状態にデータを作成し、またこれらデータを公開するまでの一連の作業を引き受けることとなりました。

3 1999年2月13日には、関係者のみにインターネット上の住所といえるURLを知らせる形でホームページを仮スタートさせました。
 そして、FAQコーナーなど今日に至る主要コンテンツがある程度整った同年2月20日には「goo」「Yahoo!」に代表される検索サイトに登録申請を開始して、実質的に一般公開を始めました。
4 それ以降、私の管理人としての通常の仕事は、ホームページの更新及び、代表アドレス〈t-i-n@geocities.cojp〉宛てのメールを、被告の今丼氏などホームページ上に記事を掲載している者へ適宜、転送することでした。
 したがって、便宜上、私のことをホームページの「管理人」「管理者」と称しているものの、実態としては裁量権のないオペレーターといった方が適切です。
 つまり、ホームページは、私の一存だけでコントロールしうるものではありえないのです。もちろん、私は運営主体であるTINのメンバーの1人ですから、場合によっては私の意見が反映されることもありますが、「管理人個人の意見」が管理体制に直接的に反映されるということはありえません。
5 原告の「3.被告小谷は被告今井より本件サイトAおよび本件掲示板Aな
らびに本件掲示板Bの運営・管理を委託されていた。」との主張は事実と大きく異なっています。
  私は、運営・管理を委託されるという関係ではなく、「TIN」というグループを構成する常連メンバーの1人として、自分たちのホームページの更新等の機械的な作業を事務分担しているというのが適切です。
 依頼者・委託先といった法的な関係ではなく、TIN参茄者の全員が管理・運営に対して緩やかに関わっているということができます。
第2ホームページの管理者について
1 ホームページ上の記事の最終責任者については、「新BBS別館」発言番号3018、「当BBSの管理人は誰か」において、被告の今井氏が、
……………………………………………………………………………………………
ともあれ、私は管理人さんに多くの部分を任せています。
しかし、物書き(交通ジャーナリスト)今井亮一の名前を掲げたホームページである以上、管理人さんの全く勝手に任すわけにはいきません。
私の物書きとしての姿勢に著しく反することなど、重要と思われることの管理については、私は口を出します。
もしも、そうしたことについて管理人さんと私の見解がどうしても異なり、かつ私が管理人さんの見解を容認できないときは、管理人さんに辞めてもらうか、私に関するものをホームページから撤去するか、私はどちらかを選ぶことになるでしよう。
本件は、そのような、私が口を出すべきことであると私は認識しています。
ですから、本件についての管珪人は実質的に私・今井亮一であると考えてくださってけっこうです。
……………………………………………………………………………………………
 と述べていますが、私の認識もこれと全く同一です。
2 被告の今井氏が、BBS上に「管理人さんがいうことをきいてくれない」との旨の投稿をしたことがありますが、これは、私が、週刊誌記者としての本業の多忙さゆえに、被告の今井氏のホームページ更新の要求になかなか応えられなかったことを指すものです。
3 私は、ホームページ上においては、管理人として特に本名を名乗ることなく匿名で活動してまいりました。その動機はホームページ作成において、わざわざ名乗る理由を感じられず、r縁の下の力持ち」に徹した働きをしようと考えていたためです。
 なお、私は、これらの仕事に対して一切報酬を得ておらず、全てボランティアとして活動してきました。
第3 当BBSの運用の基準について
1 「月刊交通違反 on the Web」では、BBSを自由な言論の場と考えています。
「自由な言論の場」ならば、削除は言論の自由を制限するものであり、慎重を期さねばならないことは言うまでもありません。
 つまり、BBSが言論の場である以上、掲示板上で、相手の矛盾や破綻を指摘し、反論が可能であり、それによって自らの名誉を守ることができます。
 また、誹誘中傷、名誉蟹損に当たるというべき投稿を、掲示板の「管理人」が数時間後に不特定多数の訪問者が読んだあとで独断により削除し、かつ、誹誇中傷された当事者が、書き込みの存在を知らなかったという場合は、その人は反論すらできず、「管理人」はその人の名誉の回復を妨げたことにもなります。
 さらに、誹誇中傷、名誉段損に当たるような投稿を削除してしまい、かつ、削除があったこと、削除された投稿者が不特定多数に特定されるというような場合には、後に「掲示板の管理者が強権を発動して削除しなければならないほど悪質なことを書いたのか」という印象を与え、逆に投稿主の名誉を蟹損することになりうるといえましょう。
 したがって、「月刊交通違反ontheWEB」内に設置してきたBBSにおいては、原則的に「投稿の削除」及び、特定のユーザーの書き込みを拒否する「アクセス制限」を行わない方針で運用してきました。
2 もっとも、絶対に投稿の削除は一切しないということではなく、個人の住所や電話番号や一般市民の個人情報などを勝手に暴露するような投稿や、ネット用語で「掲示板荒し」と呼ばれるものは削除する方針でした。
 実際にも、記号(「・」)とスペースだけが数十連続投稿されたものや「死
ね死ね死ね」と死ねが何十も無意味に続くような投稿は削除してきました。
また、特定のユーザーの書き込みを禁止する「アクセス制限」については、BBS上にて不規則発言をおこなうハンドルネーム「Ninja」を対象として、1999年10月23日から28日までの間、私の判断により実施したことがあります。
 これが当ホームページにおける最初にして最後のアクセス制限となりましたが、この対応に対する当時の議論や批判を受けて、その後は、「特定のユーザーの書き込みを拒否する『アクセス制限』を行わない方針」が導き出されたものです。
3 ところで、「掲示板上で、相手の矛盾や破綻を指摘し、反論が可能」という点について、原告の発言数について注目してみると、
「旧BBS別館」2000年08月28日以降の発言総数1498件の内、

ハンドル名
回数  
ES25: :222回  
今井 :218回  
Initia1_: :101回
←原告のこと
KONN0 :94回  
平* :59回  

となっており、また、「新BBS別館」2001年7月8日の新BBS別館の投稿ランキングでは、
ハンドル名 発言回数  
Initial_P
203    
←原告のこと
今井亮一  102      
KONN0  57      
ES250  57      
よこしまただお  57      
あじ 43 51      
\(・o・)/ver.ねおあふ一 37      
86らいだ一 34      
山碕よしへら 29      
平*泰* 29      

ハンドル名 投稿文字数  
Initia1_P
214719
←原告のこと
今井亮一  149986  
山崎よしへら  55380  
KONN0  43814  
平*泰*  39156  
よこしまただお  26968  
鈴太郎 26771  
\(^o^)/ver.ねおあふ一  25914  
ES250  18169  
異邦人  14153  


との数字が物語っているとおり、発言回数および文字数からも、原告は十分に「言論の白由」を享受しており、発言機会を奪われることもなかったζとは明らかです。
 これも「月刊交通違反 on the web」の運営方針の賜物というべきだと思いますが、原告は、誰よりもBBS上で反論することが十分に期待することができたものと考えられます。
第4 原告からの削除要求について
1 原告は、訴状において
「(2)平成13年7月3日,タイトルに「アホ」「無秩序」等の表現を用いた次の4発言について,被告小谷に対しては内容証明郵便で,本件掲示板Bのサーピス提供者である後藤氏に対しては電子メールおよび本件掲示板への書き込みで,原告は削除の依頼をした。」
と主張していますが、文字通り「被告小谷に対しては内容証明郵便で,本件掲示板Bのサービス提供者である後藤氏に対しては電子メールおよび本件掲示板への書き込み」したものであり、BBS上において、或いは「月刊交通違反 p the Web」トップページ及びBBS上に明示していた私が管理する代表メールアドレス〈t-i-n@getities.oojp>(企業の代表電話番号に相当するもの)を通して「月刊交通違反ontheWeb」に対して直接の削除依頼は全くありませんでした。

2 もし、原告が、早急に削除を必要とするのであれば、BBS等で公開されている、被告の今井氏やTINの代表アドレスにこそ削除依頼メールを送るべきだと思われますが・わざわざ時間のかかる内容証明郵便で私に削除依頼をしたり、或いはBBSのレンタル業者にメールで削除依頼をするなど、その行動には疑問を感じます。

3 なお、原告が削除依頼をした書き込みは、BBSのレンタル業者により削除され、私が削除するまでもなく原告の目的は達成されています。但し、この書き込みについては、後に原告の発言復活を了承する旨の発言を受けて、被告の今井氏がBBS上に再現しています。

4 また、原告は、「被告小谷は原告の削除依頼に対して,何の反応もなかった。」
と主張していますが、もとより、私の立場はこれまで陳述してきたとお
り、「匿名のオペレータ」であり、「反応」する立場にはありませんでした。
 実際にも、BBSの運営に関する質問・意見に関しては、事実上の渉外担当であった被告の今井氏が代表して対応にあたっており、これをもって原告の要求を満たすものと考えていました。
5 上記の削除要請にかかる当該書き込みのほかは、被告の今丼氏と平*氏をはじめ、BBSの全ての書き込みに関して、原告から削除要請がなされたことは1度もありませんでした。
 そもそも、被告の今丼氏と平*氏の原告に関する発言は、原告が主張するような名誉毀損ではなく、むしろ原告の発言に対する反論と呼ぶのが適当と考えられます。
6 甲第31号証の内容証明郵便については、私は受け取っておりません。配達証明をした神田郵便局に照会したところ、平成13年7月4日配達のこの郵便物は受取人が「集*社/受付/鈴木」となっているとのことで、(株)集*社に調査を依頼しました。調査の結論は(株)集*社杜内にて紛失したとのことで、詳しい事情については、「週刊プ*イボ*イ」編集部作成の事情説明書(乙第38号証)をご参照ください。
 もっとも、仮に当該内容証明を受け取っていたとしても、上記のとおり、削除以来に対する判断については何ら影響を与えなかったであろうとは思います。
第5 まとめ

 以上から、原告の請求は不当なものであり、到底認められるべきではない.と考えておりません。

以上