甲第51号証より
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連続リレー小説『スカトロ刑事(デカ)』

  第1話 スカトロ・プロファイリング:今井亮一(東京都)

           



「おはようございますっ!」
 超美人でスタイル抜群の女性が、ビシッと敬礼している。
 警視庁鼻曲署に配属された新任刑事、清里薫子(きよさと かおるこ。25歳)で
ある。
 じつに頭が切れそうな女性である。

 事件発生!
 赤色の警光灯(道路交通法施行令第14条)を忙しく回転させたパトカーがたくさ
ん集まっている。制服の警察官たちが交通規制をし、ヤジ馬が集まり、現場は大混
乱。
 そこへ、ボスの藤堂岡(とどおか。50歳。トドに似たブ男)と薫子がやってく
る。
 藤堂岡は、真剣、深刻な表情。薫子は、いったいナンの事件か、まだ聞かされてい
ない。が、重大事件らしい。
 犯行現場は、広い道路の中央分離帯のようだ。藤堂岡と薫子が近づく。制服の警察
官たちが敬礼して道をあける。
 藤堂岡が重苦しく眉間にしわを寄せ、言う。
「うむむうっ。これで連続5件目か……!」
 藤堂岡の前に死体はない。かわりに、無人式自動速度取締り機・オービスVLhが
ある。
 いったいどういうことか理解できず、薫子はオービスの撮影端末に近づく。
「……?」
「見なさい、ソレを」
 オービスの撮影端末の上にナニやらある。薫子は怪訝な表情で顔を近づけ……。
「ぎえええええ〜ッ!」
 飛び退き、尻モチをつく薫子。
 なんと、オービスの上にあるのは、とぐろを巻いた巨大なウンコではないか!
 藤堂岡は気にせず、眉間にシワを寄せる。
「連続・非現住建造物損壊……。いったい何者が……」
 そこに、髪はボサボサ、だらしない格好の男がふらりと現れる。理知的で涼しげな
目をした男である(モデルは『Xファイル』のモルダー捜査官)。
 男は、ウンコを見るなり、血相を変えて他の刑事たちを遠ざける。そして、貴重極
まりない“お宝”を見るごとく目を輝かせ、ウンコに近づく。
「ウンコよ! ウンコ! 早く片づけてッ!」
 と薫子が、抗菌スプレーをふりまきながら叫ぶ。
 しかし男は、トグロをまくウンコに顔を近づけ、ワインのフレーバーを確認するか
のように真剣な表情で臭いを嗅ぐ。
「ななななッ、ナニやってんのよッ!」
 と薫子は取り乱す。
「いいんだ」
 藤堂岡は薫子を制し、頼もしそうに男の行動を見守る。
 男は、キザな仕草でポケットから特殊な定規を出し、ウンコの全長および直径を測
定。さらになんと、ボールペンをウンコに突き刺して堅さを計る。
 驚愕の目を見開く薫子の傍らで、藤堂岡は頼もしげに言う。
「キミとコンビを組んでもらう、雲古山盛男刑事だ。前のパートナーはコレラで警察
病院に隔離されててね」
 男はボールペンの先のウンコをペロリと舐める。
「きゃあ〜ッ!!」
 発狂しそうになる薫子をよそに、雲古山は目を細めて言う。
「性別女性、推定年齢22歳……」
 それからもう一口ウンコをなめ、言う。
「身長168センチないし170センチ。体重50キロ弱。現場から半径10キロ以
内のワンルームマンションに居住し、服装はボディコンを、食事はイタメシを好み、
マリンスポーツを得意とするものと思われる……」
 藤堂岡が大きくうなづく。
「では、やはり前の4件と同じホシか」
 雲古山がうなづく。
「ええ、まちがいありません。模倣犯の線はナシです」
 呆れて声も出ない薫子に、藤堂岡はニコニコと言う。
「“スカトロ・プロファイリング”。彼は去年までFBIでその講義をしてたんだ
よ。100万人におよぶ犯罪者の糞尿を調査・研究したって話だ。どうだ、頼もしい
パートナーだろう」
「いやあッ!」
 潔癖性の薫子は狂乱し、現場から逃げだそうとする。
 止める藤堂岡を踏み越えて脱出しようとした薫子の眼前に、雲古山がぬうっと顔を
出す。ウンコをつついたボールペンで薫子を指して。
 薫子はヒイイッ!と息が止まり、尻もちをつく。
「う〜ん。キミのようなタイプは、ボクのファイルにはまだないなあ」
 そして雲古山は、ポケットから、いろんな形の容器を取り出す。
「便はこれに、尿は……。あ、サンプルだから少しでいいよ」
 薫子がわなわなと震えているのを見ると、
「便秘ならこれを」
 と巨大な浣腸器を出す。そういうのがポケットにいっぱい入っているらしい。
「われわれのもみんな彼のファイルにあるんだよ」
 と藤堂岡がポッと顔を赤らめる。他の警察官たちも、もじもじしてきまり悪そうに
顔を赤らめる。
 薫子の嫌悪が爆発。雲古山に向け拳銃を乱射する。流れ弾がオービスのレンズを割
り、ウンコ
にも当たって飛び散らせる。みんな逃げまどう。ヤジ馬たちも逃げまどう。

                               つづく……。


 つづきを書くのはあなただっ!