ITSと交通管制情報
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「安全で渋滞のない快適な交通社会の実現」という大義名分のもとで、国家的プロジェクト“ITS”が本格化している。「円滑で安全な交通のため」という名目が踊るばかりで、政官業の癒着に疑惑の目が向けられることもない。
 

最終更新2001秋頃

 

出 展
『ITS道路・交通・情報システムとそのアクションプログラム』 地域化額研究会 1996年12月17日発行
『ITS 21世紀、車と道路はこう変わる』 朝日新聞社 1998年2月1日発行

 

ITS
 


ITSには魑魅魍魎な略語が使用されている。上の図をクリックすると略語の説明が示されます。

■ナビゲーションの高度化
■自動料金収受システム
■安全運転の支援
■交通管理の最適化
■道路管理の効率化
■公共交通の支援
■商用車の効率化
■歩行者等の支援
■緊急車両の運行支援
Intelligent Transport Systems
 高度道路交通システム:道路交通の安全性、輸送効率、快適性の向上等を目的に、最先端の情報通信技術等を用いて、人と道路と車両とを一体のシステムとして構築する新しい道路交通システムの総称

ITSをめぐる政官財の全体像

20年間の市場規模が50兆円とも言われるITSの周辺に、政官財が利権獲得のために渾然としていた時期は一段落し、現在、左のような形態となっている。
構造不況の原因となった官主導型統制と、多数の公益法人設立による業務の非合理性を感じ取るのは私だけではないだろう。

道路交通情報の現状

     
   
 
日本道路公団
日本道路交通
情報センター
 
 
   
 
道路管理者
 
 
 
 
警 察
   
JARTIC
テレビ・ラジオ局

交通情報収集のためのインフラ
交通管制センター
165箇所
交通信号機
157792基
車両感知器
94597基
交通流監視カメラ
1836台
交通流情報板
2175基
1996年警察庁データより

実施しているのは都道府県警察で、もちろんその費用は都道府県予算と国の補助金である。その情報を財団法人道路交通情報センターが流している。 そして、ラジオで流れる道路交通情報はラジオ局が財団法人道路交通情報センターへ料金を支払って放映されている。(⇒道路交通情報の独占をゆるされた天下り団体

 つまり道路交通情報センターは既にある情報を無償で手に入れ、有料でラジオ局などに売っているのだ。また都道府県道路交通情報センターの多くは都道府県警察の施設内にあって、公益性の観点から賃料の免除がされている。そして日本の全ての道路交通情報は、都道府県警察を経て財団法人道路交通情報センターに委ねられているのだ。

現在の情報でできること

 速度規制が著しく低いことがかえってドライバーのストレスに悪影響を与え、その結果として警察への不満、遵法意識の疎薄化を招いているとの指摘も少なくない。その反面、警察は交通管制センターに集積される交通データ(速度、通過台数等)を明らかにしようとはしない。地方自治体でさえ一部警察に集積されている情報を新たに調査せざるを得ない状況はどう考えても不合理であろう。

 主要道路の一定時間ごとの台数と速度はとっくの昔にリアルタイムで警察はモニターできるようになっている。これらの情報を明らかにして有効な議論を行い、ドライバーの理解を得る努力をまず為すべきであって、それなしに莫大な費用のかかるITSを推し進めることは許されることではない。

国際的標準化について

 ITSは日本だけでなく欧米でも研究が進められており、国際的な技術の主導権争いもある。

I TSの国際標準化のための組織としてISO(国際標準化機構)があり、日本では警察庁、運輸省、郵政省ほか各社団・財団法人が協議をしている。

 

ITS関連予算のうち実用化とインフラ整備予算
   

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海外事情
TEXAS DOT,Houston Transfar 主要道の車の流れをリアルタイムで見れる。実際の走行速度を明らかにしていることに注目
WASHINTON STETE DOT 地図上のカメラのマークをクリックすると道路の映像が見られる
※DOTとはDepartment Of Tranceport(交通省)である。日本のように警察が交通情報を管理しているところはない

考 察

道路交通情報は、都道府県予算と国の補助金をもとにしたインフラの整備によって集積されている。
  国の歳入に占める自動車関連税収がとても高いことは、日本自動車工業会の指摘のとおりだ。

なお、都道府県の警察費は、警察が独自に予算案をつくるので、都道府県の意見が反映されることはない。
  東京都知事が美濃部氏であったとき、警察官の増員に関する警視庁の意思を美濃部知事が拒絶したところ、総理大臣による「罷免」という脅しに屈した。
 
この事例が示すとおり、事実上都道府県は警察費を負担しながらも何の権限も与えられていない。「警察の言いなり」といっても過言ではない。

「公益のため」の潤沢な予算の多くは、交通情報集積のためのインフラに注がれてきた。このインフラによって得られた情報は、JARTIC日本道路交通情報センターに無料で提供される。JARTICはその情報を放送局などに売って利益をあげる。

そしてITSは、ラジオ局への情報提供料とは比較にならないほど莫大な利権を生み出すことになるのである。

 

 

 

 右の図は総務庁発表の平成9年1月現在の人口推計をグラフにしたものである。高齢化社会に突入するとともに、自家用車の登録台数は減少傾向を示し始める。その後100年は減り続けることは間違いないだろう。営業用自動車は既に減少傾向を見せている。

 VICSは渋滞解消の決定策と自画自賛しているが、渋滞は登録自動車と免許保持者の減少によって少しづつ緩和されていくのである。

   
考 察

 黙っていても経済の停滞とそれにともなう国民の消費意欲の低下、そして人口の減少という材料によって、渋滞は徐々に解消されていく。そのなかで抜本的な行政改革もしないまま、批判の集中砲火を浴びている公益法人を主軸に置いた施策に、莫大な予算をつぎ込まれていることにドライバーも気付かなければならない。

 タダのようにみえる行政サービスも常に何らかの形で国民が負担している。また公益性のあるこれらの事業が破綻したときには追い金まで取られることをひとりひとりが自覚していくことは大事なことである。

 

 

VICS

VICSとは

 VICSセンターで編集、処理された渋滞や交通規制などの道路交通情報をリアルタイムに送信し、カーナビゲーションなどの車載機に、文字・図形で表示するシステムのこと。既にVICS端末を装着済みのナビゲーションシステムが数多く流通しており。最も身近なで現実的なITSがVICSである。

VICSセンターの発表する費用対効果

項 目
項目ごとの経費と効果
 
20年間の費用と効果
必要事業費
情報収集
既 存
1兆2000億円
情報処理・編集
330億円
VICSセンター負担
情報提供
3700億円
既 存
情報活用
8000億円
端末購入者
効  果
時間短縮効果 7兆3000億円  
7兆7000億円
燃料消費減効果
4500億円
 

 さらにVICSセンターは今後10年間のVICS費用を約100億円、年間平均にすると10億円としている。 情報活用の8000億円はナビゲーションをVICS対応とするための1台あたりの価格を5万円として20年間にこれが1600万台売れるという想定で算出されている。

 ユーザー購入価格に反映されるものであれば負担するのはユーザーであって必要事業費ではない。とするとその8000億円を指し引いた4030億円の費用で7兆7000億円の効果を上げるとVICSセンターは主張していることになる。効果を正確に測ることはできない。しかし費用が本当に4030億円で済むのかどうかは計算可能である。

 警察庁では光ビーコンと交通管制システムの高度化に1996年度だけで(平成8年度)約241億9200万円を使った。都道府県負担を全体の5割として計算すると、全国で約500億円になる。VICSセンターが既存としている設備はVICSのために着々と投資によって積み上げられている。

発表されない費用はだれが負担するのか?

VICSを予定されている全国ネットにするために必要な施設整備(インフラ)
 
道路延長(上下線を別路線とする)
単位:km

計画されている設置本数

光ビーコン
一般道
調査中
既存の超音波車両感知器
94597基の置換
電波ビーコン
高速道路
約14000
5000〜6000本
FM多重放送
NHKと契約(NHKの電波が届く全てが対象)

 1999年8月の時点では、都道府県警察が設置している車両感知器は超音波式がほとんどであった。この車両感知システムが光ビーコンに置き換えていかなければ、VICSの情報提供はできない。なお警視庁管内でさえ、95%が超音波式ビーコンである。(交通管制センターにて確認2000/7/29)。つまりすべてを光ビーコンとするためには、莫大な予算が必要とされるのだ。

 一方、VICSセンターが発表する費用対効果には、光ビーコンのコストがまったく含まれていない。「光ビーコンに置き換わる予定となっている」とされているだけなのだ。

 そこで、VICSセンターが発表しないコストをおおまかに調べてみよう。高速道路の電波ビーコンは1基が約400万円といわれている。一般道の約10万本を光ビーコンに置きかえるには、光ビーコンが電波ビーコンと同じ価格であったとしても4000億円かかる計算になるのである。もちろん情報収集の端末だけでは情報収集はできない。端末からの情報を集めるための情報ハイウェイ(回線)の敷設コストが必要になる。また、集まった情報を処理するために各交通管制センターにおかれている分析・制御のための巨大なコンピューターシステムにも更新が必要だ

超音波ビーコン
超音波式のこのタイプでも通過する車両の速度を測ることができる
光ビーコン
双方向性を持たせたこの光ビーコンが電波ビーコjンより安いはずがない

 

   

 

 

 

超音波ビーコン 光ビーコン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

情報収集料
 渋滞情報は都道府県警察が収集する渋滞情報を財団法人日本道路交通情報センターから無償で提供される。
 財団法人日本道路交通情報センターからの提供について、システムの改善等が必要になればそれを財団法人VICSセンターが負担する。

 

VICSセンターの利益
VICSセンターは補助金の他にメーカーから次の情報量を得ている。
VICS端末1台当たりで株式会社VICSセンターが得る利益(従量技術料)
地図標示型
2000円
簡易図形表示型
1500円
文字情報型
500円
  1. センターが情報を開示したときの情報開示料
  2. 端末1台売れる毎の従量技術料

 

 

 

ETC

     

 

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