駐禁地獄の東京/地方自治のロンドン

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数字をクリックすると、
各自治区の駐車マネジメントのページ(英語)が開きます。
以下、英語ページを読むためのキーワード。

  • Parking meter:パーキング・メーター
  • Pay & Display:パーキング・チケット
  • Parking bay:路上駐車場
  • Car Park:路外駐車場
  • Parking permit:青空駐車許可制度
  • CPZs:コントロールド・パーキング・ゾーン
  • PCNPenalty Carge Notice):違反チケット
  • Traffic apeal:駐禁取り締りへの不服申し立て
  • Congestion Charging:ロード・プライシング
  東京 ロンドン
全域 23区
面積 2,102km2 621km2 1,579 km2
人口 1257万 850万人 717万人

欧米の都市には、日本とは比較にならない数のオンストリート・パーキングが存在し、たくさんのクルマやバイクが路上に駐車できるようになっている。

一方、中央集権的な日本の警察は、「路上駐車が事故の原因だ!」と広報し、すべての市街道路を、基本的に駐車禁止としてきた。そして、取り締まりの〝お目こぼし〟によって、なんとか都市の機能が保たれてきたのだろう。

しかしながら、取り締まりは、合理的な規制があってはじめて有効に機能するものである。だから、まず日本の駐車規制に合理性があるのかどうかを、海外の都市と比較することによって、考えてみたい。

定期利用ではなく、一時利用のできる駐車場を中心に比較した
    駐禁地獄の東京 地方自治が機能しているロンドン

路上駐車場(by 道路管理者)
駐車場法上では、道路管理者が整備できることになっているが、警察がダメといえば作ることはできない。事実、東京にはゼロ。関東では、埼玉に12台分が存在するだけ。
自治区の駐車場各自治区ごとに路上駐車場(パーキング・ベイ)を整備されている。
たとえば、Harrow自治区では、4000台分のパーキング・ベイを整備している。
ほかの区でも、軒並み数千台単位のパーキング・ベイを整備している。
パーキング・メーターやペイ・アンド・ディスプレイ(日本式だとパーキング・チケット)、それから無料のパーキング・ゾーンは、各自治体によって設置される。これはほかの欧米都市も同じだ。
一方、日本ではソフト(警察)とハード(道路管理者)のタテ割りによって、路上パーキング施設もタテ割りとなっている。

パーキングメーター・パーキングチケット(by 警察)
警視庁が東京都の予算で整備し、警視庁の天下り団体である東京都交通安全協会が管理する。なお、警視庁は、10年ほど前から、これらを減らし続けている。
路上駐車場(by 道路管理者)
道路法施行例の改正以前から、歩道上の2輪車駐車場がわずかに存在する。ただし、定期利用が主体であり、バイクはせいぜい125ccまでだ。これら現存する2輪車駐車場は、警察署との協議によって設置されているが、おもしろいことに、道路交通法上の表示はなされていない。なお、歩道にあっても、車道には一切のバイク駐車場が存在しない。
各自治区がバイク用の無料駐車場を整備している。たとえば、千代田区の5分の1程度の面積しかないシティ・オブ・ロンドンでさえ、無料のバイク用パーキングベイが1300台分も存在する。

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パーキングメーター・パーキングチケット(by 警察)
バイク用には、バイク用パーキングメーターは存在しない。もちろん、フリー(無料)パーキングもない。
東京都の保有する土地は、東京都の天下り団体である財団法人東京都道路整備保全公社(商標はs-park)に秘密の単価で貸し与えられ、直営駐車場として運営されている。なお、直営駐車場の料金収入は、同公社のものとなり、駐車場ごとの収益も秘匿されている。
東京都道路整備保全公社の常勤役員
役職 氏名 前職
理事長 小池正臣氏 前環境局長
常務理事 砂岡攻氏 前人事委員会事務局任用公平部長
常務理事 山崎俊一氏 前都市整備局基盤部長
その他、公有財産を使った駐車場
各自治区ごとに路外駐車場が整備されている。
たとえば、Harrow自治区では、4000台分のパーキング・ベイのほかに、1700台分の路外駐車場を運営している。
Harrow Council
とうぜん料金収入は、Harrow自治区の財源となる。
路外駐車場のヒミツ
日本では、すべての道路が駐車禁止にされ、そして路外駐車場の必要性が露骨にアピールされている。そうして、潤沢な財源が注がれて路外駐車場が完成し、それら公共駐車場の利権は、公益ホージンにゆだねられ、そして、天下り役人が笑っている。
警視庁が策定する。なお、警察庁が警視庁を指揮することはあっても、都知事が警視庁を指揮監督することはできない。なお、ときどき、石原都知事が警視庁に文句をたれることがあるが、実際には〝お願い〟程度のことしかできない。 だから、日本の交通行政には地方自治が存在しない、といっても過言ではないだろう。
コントロールド・パーキング・ゾーン 多くの自治区には、駐車マネジメント課、あるいは駐車サービス課があって、そこが規制と取り締り、それから駐車サービスの策定をおこなっている。
駐車規制には、CPZs(コントロールド・パーキング・ゾーン)というエリアごと、あるいは路線ごとに決められているが、その多くは路上駐車スペースであり、その数は日本とは比べものにならない。
警視庁の警察官、または警視庁が東京都の予算で委託した民間の駐車監視員が取り締まる。なお、放置違反金は都道府県の財源となるが、警察庁交通局の通達によって、その使途は保留とされている。
2004年6月まで、標識によって規制と黄色で区画された交差点内(yellow box junctions)の取り締まりは警察がおこなっていた。現在では、警察ではなく、ロンドン交通局(Transport for London)、あるいは各自治区の責任において、取り締まりがなされている。
→参照:TfL - ストリート・マネジメント

駐車監視員になすりつけられる取り締まり強化への反発

道交法の改正によって、警察官だけでなく、警察が民間の駐車監視員に駐禁の取り締まりを委託できるようになった。駐車監視員は、取り締まり(正確には確認業務)だけをミッションとするので、発注者である警察の胸先八寸によって、これまでの〝お目こぼし〟ではなく、徹底的な取り締まりが可能だ。批判されても「民間の監視員だから…」という逃げ道があるので、警察も気が楽だろう。

全国一律で駐車禁止が原則のニッポン

中央集権的なプロセスで物事を決める警察は、交通の円滑・事故の防止などをあげ、〝原則駐禁〟を正当化している。しかしながら、これらは〝抽象的な大儀〟にすぎない。欧米諸国のオンストリート・パーキングが都市機能の一部として整備されているのに対し、全国一律で原則駐禁をつらぬこうとする日本の警察のやり方にはムリがある。、

警察次第のオンストリート・パーキング

規制の妥当性はさておき、ニッポンの駐車行政の根本的な問題は次のとおり。

日本の交通行政/欧米の交通行政
  • ソフト(警察)とハード(国交省)の縦割りが、駐車スペースの供給を阻害してきた。
  • 中央集権的なシステムが強力で、自治的な駐車マネジメントが機能していない。
  • オンストリート・パーキングは、警察がNOといえばつくることができない。
  • 規制を厳しくするほど、取り締まりの舞台が増える。
  • 取り締まり件数が増えるほど、警察予算も増える。
  • 路上パーキングを認めないことで、各種外郭団体の運営する路外駐車場がもうかる。
    ※路上駐車場・パーキングメーターでは、料金収入を外郭団体に直入させることはできない。
  • 国土交通省は、路外駐車場を、ETCの次なるターゲットとしている。
    ※駐車場の道路公団化がすすむ。

国家レベルの責任転嫁システム

以上のとおり、日本の道路交通行政においては地方自治が機能していない。

そのかわり警察が絶大な権限を握っている。なのに警察官は、まるで取り締まりだけが仕事であるかのように口をそろえ 有名無実化した制度に責任転嫁ばかりをしている。

警察システム