反則金のゆくえ

はじめて通る道路でカーブが迫ってきました。あなたはどのように速度を調整しますか?

  1. 30キロ規制の標識を参考にして、時速30キロを越えないようにする。
  2.  
  3. 最小半径の数値を参考にして、速度を調節する。
  4.  
  5. カープの状態そのものを予測しながら、速度を調整する。
が時速30キロを示すから、「時速40キロくらいでいいや」というやり方のドライバーも少なくないかもしれません。ところでは時速30キロ以上の走行を禁止する規制標識で、注意を呼びかける警戒標識です。のどちらが「事故防止」に有効なのかはともかくとして、デラックスなのはの方です。では、なぜ速度規制標識がこんなに立派なのかを考えてみましょう。

■だれが道路標識を設置するのか?

−縦割り行政−
同じく「事故防止」を目的とする看板なのですが、設置する機関が違っています。このように異なる機関が、重複したお仕事をすることは、「縦割り行政」によって起こる問題のひとつです。
速度規制標識は警察(公安委員会)が設置
注意標識は道路管理者(国、都道府県または市町村)が設置

■乱立する速度規制標識

警察(公安委員会)は、カーブを含む区間を、直線区間よりも厳しく規制しています。
※このように親切に規制する国は他にありません。「カーブだから注意しろ」と注意を呼びかける標識があるだけです。詳しくは後述。
そして日本の道路には、規制の変化を「始まり」「終わり」で示すための標識が、乱立することになっています。




時速50km規制区間 ここから時速40km規制 ここから時速50km規制

■禁止!禁止!!禁止!!!

警察(公安委員会)が設置する速度規制標識は、必ずといってよいくらい駐車禁止標識とセットになっています。またカーブに設置された速度規制標識ははみ出し禁止とセットになることが多いようです。速度規制標識との3点セットも少なくありません。




■他の国はどうなのか?

欧米では、WORNING SIGN(警戒標識)で注意を呼びかけるのが一般的です。 「警戒標識で注意をうながすだけで十分」という考え方は、だれだって「事故をおこしたい」とは思わないことを考えれば当然の手法だといえます。 左の手法を日本にあてはめると、下のようになります。

 このほうが、よりも、はるかに事故防止の効果があるではないだろうか?
  すくなくとも、を乱立させるよりカーブの手前にだけを設置するほうが合理的であることに間違いはない。

■豪華な道路標示・標識

横浜の大動脈となった環状2号線
威風堂々とした道路標示と、豪華な電飾式の標識が示すのは、「法定速度」

なお、開通当初(1999-2000)の環状2号線は時速50〜40キロ規制であった。「40」の道路標示が消された痕跡が読める。

■なぜ規制標識は立派なのか? −反則金のゆくえ−

交通取締りの警察官はよく次のように言います。「反則金は国庫に収められて交通安全のために使われるんだ」
たしかに反則金は一度国庫に収められます。しかし、次の表にしたがって各自治体に戻ってくる。これが「交通安全対策特別交付金(特交金)」だ。

1 都道府県基準額

交付時期毎の交付金の総額 × 当該都道府県における交通事故の発生件数 ×
2
当該都道府県の集中地区人口 ×
1
当該都道府県の区域内の改良済道路の延長 ×
1






全国の交通事故の発生件数
4
全国の人口集中地区人口
4
全国の改良済道路の延長
4

2 指定都市基準額

関係都道府県の都道府県基準額
×
当該指定都市における交通事故の発生件数
×
2
当該指定都市の集中地区人口
×
1
当該指定都市の区域内の改良済道路の延長
×
1






関係都道府県の交通事故の発生件数
4
関係都道府県の集中地区人口
4
関係都道府県の改良済道路の延長
4

3 市町村基準額

関係都道府県の都道府県基準額−関係都道府県の区域内の指定都市の指定都市基準額の合算額 × 当該市町村における交通事故の派生件数 ×
2
当該市町村の人工集中地区人口 ×
1
当該市町村が管理する
改良済道路の延長
×
1






関係都道府県の指定都市以外の市町村における交通事故の発生件数の合計数
4
関係都道府県の指定都市以外の市町村のの人口集中地区人口の合計数
4
の関係都道府県の指定都市以外の市町村が管理する改良済道路の延長の合計
4
【警察のパラドックス】
−優秀な警察は、優秀という評価を受けない−
  1. 警察への期待
    事件が多く、治安が悪いほど、警察の活躍する舞台が広がる。
  2. 警察への賞賛
    犯人を逮捕すると、警察は賞賛を得る。

では、事件を次々に未然に防ぐ優秀な警察は?

事件にならないものに市民は注目することはありません。したがって、次々に未然に防ぐ警察が、「優秀」という評価をされることはない。

逆に、未然に防ぐ努力をしない警察ほど、市民の期待を受け、(犯人を逮捕して)賞賛される舞台を得ることができる。

【マッチポンプ】

自分でマッチを擦って火をつけておいて消火ポンプで消す意味。

自分で起こしたもめごとを鎮めてやると関係者にもちかけて、 金品を脅し取ったり利益を得たりすること。

交通安全対策特別交付金に関する政令より
 このように、交通事故が多い都道府県に多くの特交金が流れる仕組みになっている。とうぜん都道府県をへて、警察に配分される予算も増加する。つまり、都道府県警察は、事故防止に効果があがってしまったら(事故が減ったら)特交金が減ってしまうことになるのである。したがって、事故を減らさずに予算を消化しつづけることが、“お役所警察”にとっての最善の手法になるのである。これが「警察のパラドックス」だ。

“お役所仕事”の結果評価は、「予算をとってそれを消化することが第一義にある」というのは、見識者の共通する意見だ。もちろん警察も、予算を消化することが第一義にあることに変わりはない。なぜなら、警察は“安全”を大義名分とするお役所なのである。

この問題は、都道府県警察レベルでのやり方を問う前に、システムが問われるべき問題だ。なぜなら、ニッポンの行政機関は自ら変革することができないからだ。特交金のシステムでいえば、警察があつめたカネが警察に流れることに対し、「マッチポンプの可能性」が容易に予想できる。しかし、特交金のシステムには、それを防止する安全装置がないのである。

警察が反則金として集めたカネによって警察が潤い、そして反則金を生み出すバックグラウンドにはいくらでも取締りのできる交通状態、つまり、“非現実的な交通規制”がある。そして、その“非現実的な交通規制”が警察の権限でどうにでもなるのであれば、いつまでたっても事故防止に有効な施策など実施されるわけがないのだ。したがって、「警察の交通安全施策によって、交通事故が減ることはない(費用に見合った効果はない)」といっても過言ではないのである。

「一所懸命に働いている警察官に失礼なことを書くな!」とお叱りを受けるかもしれませんが、これはアカウンタビリティの問題です。


警察の公共事業

信号、道路表示・標識、そして交通安全情報収集のための設備には既に莫大な費用が注ぎ込まれています。そして不正がいくつも発覚し、その背後にある業界全体の体質とそれを容認するシステム(公益法人の“調整”・公務員の天下り)を批判する声も後を絶たない。もちろんこうした不正な慣行は“警察一家”に限った症状ではないが、信号機メンテナンスにおける「日本交通管制技術脱税事件」は脱税としては最高額の脱税であり、多くの警察職員らが天下った企業の犯罪である。また“警察一家”の組織的な隠蔽工作も明らかにされている。

21世紀を迎え、警察の公共事業は、交通管制施設に莫大な予算を注ぐようになった。2004年に書き足したコンテンツへは、下のバナーからお進みください。

 

事故多発!のプロパガンダ