犯罪の損得勘定
経済犯罪の損得勘定
A 量刑に対する損得勘定
「5億円」の脱税容疑に対して罰金が20万円で済ませた政治家がいた。彼の「犯罪収支」は大きな黒字となる。
B 捕まる可能性に対する損得勘定
バレなければ法的な制裁を受けることもない。 なお「密室の犯罪」と呼ばれる経済犯罪は、内部告発でもない限りバレることはない。したがって、内幕を知るものに共犯意識を植え付ければ、バレる可能性を劇的に低下させることができる。これは経済犯罪の常套手段である。
C 総合的な損得勘定(脱税、贈収賄など経済犯罪のモチベーション)
A×Bが経済犯罪の「総合的な損得勘定」である。
すべての経済犯罪者は、この損得勘定を綿密に計算する
性犯罪の損得勘定
A 量刑に対する損得勘定
強制わいせつ:6月以上7年以下の懲役、強姦:2年以上の有期懲役
ただし双方とも親告罪である(被害者が告訴しなければ捜査もない) 。
B 捕まる可能性に対する損得勘定
バレなければ法的な制裁を受けることはない。したがって、犯罪者はバレにくい犯罪を計画する。 なお性犯罪においては、被害者の裸体を撮影することで、バレる可能性を劇的に低下させることができる。つまり泣き寝入りさせるのである。
→風俗係官室
C 総合的な損得勘定(性犯罪のモチベーション)
A×Bが性犯罪の「総合的な損得勘定」である。
すべての性犯罪者は、この損得勘定を綿密に、ないし無意識に計算する
飲酒ひき逃げの損得勘定(対歩行者重大事故の場合)
A 量刑に対する損得勘定
(1)刑事罰
危険運転致死傷罪:1年以上(死亡事故)or10年以下(負傷事故)の有期懲役
業務上過失死傷罪:5年以下の懲役・禁固または50万円以下の罰金
ただし、「重大な過失」の立証が困難な場合、検察はこれを不起訴とすることが多い。
(2)行政罰
ご参照ください 。⇒
B 捕まる可能性に対する損得勘定
飲酒がバレるかどうかによって、量刑は大きく変化する。したがって、飲酒で事故を起こしたドライバーの脳裏には、先ず「逃げよう」という誘惑が必ず生じ、次に「バレるだろうか?」、さらに「バレたらどうなる」と考え、そして行動に移される。
なお、警察の捜査力は地に落ちており、目撃者の有無がバレる可能性を大きく左右する。したがって人通りの少ない夜間の事故では、加害ドライバーには「バレないだろう」という心理が強力に作用すると推察できる。
さらに、加害車両が大型トラックの場合、「気付かなかった」と主張すれば「ひき逃げ」の立証がとても困難になる。そして、トラックドライバーはこれをよく知っている。
C 総合的な損得勘定(ひき逃げのモチベーション)
A×Bがひき逃げの「総合的な損得勘定」である。
すべての飲酒ひき逃げ犯は、この損得勘定を“大雑把かつ瞬時”に計算する
いくらA(量刑)を重くしても、Bが小さければ、Cは小さくなるのである。
【行政罰の損得勘定についてさらに考察】
改正前(現行)の点数制度であっても、飲酒で人身事故をおこせば免許取消しになることは誰にでも判断がつくはずだ。いくら点数を重くしようが(ひき逃げ付加点数10点→23点)、「出頭したら欠格〇年、逃げて捕まったら欠格△年」などといった計算をするドランク・ドライバーは存在しない。そんな計算より、B(捕まる可能性)が大きいか小さいかがC(=A×B)を計算する大きな要因となるのである。“大雑把かつ瞬時”な計算とは、このことを意味する。バレなければ何の法的責任も問われないのだ。
改正法令施行後の参考事件
■あて逃げ警官「事故のあとに飲んだ」と居直る?
福岡県警監察官室は二十一日、当て逃げ事故を起こしたとして、 道交法違反(報告義務違反など)の疑いで前原署地域課巡査部長、 小西歳博容疑者(44)=福岡市西区金武=を逮捕した、と発表した。 県警は、同容疑者が飲酒運転をしていた疑いもあるとみて調べている。
調べでは、小西容疑者は二十日午後七時半ごろ、自宅近くの市道で乗用車の運転を誤り、 左側のガードレールに接触。反動で右側のフェンスを約十メートルにわたりなぎ倒し、 民家のブロック塀を破損させて逃走した疑い。 車が側溝に脱輪したため、同容疑者は車を放置して自宅に戻っていた。 現場近くの住民が事故を目撃し、被害を受けた民家の住民が一一〇番通報した。
小西容疑者は事故の約一時間後に現場に戻ったが、福岡西署員が調べたところ、 酒気帯び運転の摘発基準(呼気一リットル中〇・一五ミリグラム)を超える 同〇・四ミリグラムのアルコールを検出した。 調べに対し「事故後、自宅で焼酎二杯を飲んだ」とし、逃走したことについては
「たばこを買いに行く途中だった。現場が地元なのであとで弁償すればいいと思った」 と供述しているという。小西容疑者はJR筑前前原駅近くの交番に勤務し、同日は休みだった。
(記事部分:2002/8/21西日本新聞)
■女性警察官の機転?道警 飲酒後の運転を不問
今月十七日午後九時半ごろ、札幌市北区北六西一の国道交差点で、乗用車とタクシーが衝突する事故があり、乗用車に乗っていた三人は飲酒後で、そのうち一人は女性警察官だったことが二十三日、分かった。タクシーの運転手(54)は腰と手に軽傷を負い、乗用車の三人にけがはなかった。
三人は、道警本部銃器対策課の女性巡査部長(33)と、その知人男性二人。乗用車は巡査部長の所有だった。
道警監察官室によると、運転していたのは知人の男性(37)で、巡査部長は後部座席にいたが、三人は同乗する前に一緒に飲酒したという。また、運転の男性は事故直後、警察官が現場に到着する前に立ち去り、約一時間後に現場に戻った。
男性の呼気からはアルコールが検知されたものの、現場から立ち去っていた間に飲食店で飲酒したため、道警は「飲酒運転を立件するのは難しい」としている。
この男性が現場から立ち去った問題について、札幌北署は道交法違反(ひき逃げ)の疑いがあるとみて、調べている。また、巡査部長が飲酒運転を黙認していた可能性もあるとみて、事故当時の詳しい状況を調べている。
(記事部分:2002/08/24北海道新聞) |
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