欧米のパーキングゾーン

欧米の都市には無料のパーキングゾーンが存在する。
バンクーバー編
ロンドン編

パーキグゾーンを減らす日本

東京・神奈川編

ニッポンの駐車規制

補助標識などによって、日時や車種を限定する場合があるものの、基本となるのは、この4レベルである。ただし、停車可と駐車可の標識は全国的にまれ。

駐停車禁止
  レベル1

駐車禁止
=
停車可
レベル2

時間制限駐車区間
  レベル3

無指定
=
駐車可
レベル4

駐車監視員を動員しての取り締まり強化によって、駐車規制とその取り締まりに対するドライバーの意識は、これまでになく高まっている。それに対応するかのように、各地の中心街で駐車規制を緩和する動きが報道されている。

しかしながら、注意深くみると報道されているのは主に貨物車の除外だ。その一方、もともと取り締まりをしない郊外道路を中心に、無指定(レベル4)区間を増やしている。

警察はなぜ、パーキングゾーン(レベル3)をすっとばして、無指定(レベル4)にしてしまうのだろう。

見せかけの規制緩和

取り締まり強化に対する反発がでるのは警察も予想していたはずだ。その対応策なのか、平成16年1月15日、警察庁は規制の見直しするように各都道府県警に通達をした。

きめ細かな駐車規制の実施について

これをうけた各都道府県警察は、○○区間△△km(××%)の駐車規制を解除・緩和した、と発表している。

警察庁は、各都道府県警察の実施結果をまとめて次のような発表をした。

約2万4600区間、約1万9600km(約10.8%)の駐車規制を解除・緩和した。

新たな駐車対策法制の施工状況より

しかしながら、法改正の前後を問わず駐禁取り締まりのメインとなるのは都市部の中心街である。だから、もともと取締りのない山間部や田園地帯、あるいは湾岸の工業地域などの規制を緩和してもあまり意味はない。

いったいどんな規制緩和をしたのか、具体的にみてみよう。

先駆けとなった社会実験

川崎市宮前区内の公園に隣接した道路において、社会実験として駐車禁止を解除したことが報道され、自動車雑誌などでも盛んに取り上げられた。

この実験は概ね好意的に扱われた。しかし東急田園都市線の宮前平駅から徒歩5分とかからない場所だ。こんな便利なところは、時間帯解除による無指定(レベル4)ではなく、1〜2時間OKなどのパーキングゾーン(レベル3)にすべきではないだろうか。

神奈川県警が規制を緩和した場所(2006年6月1日時点)

根岸駅(無余地場所)
44m
武蔵中原(無余地場所)
990m
平塚駅南口(無余地場所)
155m
本厚木(無余地場所)
450m
相模大野駅@(商店街)
相模大野駅A(無余地場所)
大和駅(無余地場所)
780m
横浜駅北口金港町
の完全解除
横浜駅東口
の夜間解除
根岸駅 無余地場所
武蔵中原 無余地場所
横浜駅のの夜間解除

神奈川県警

<無意味な規制解除>

神奈川県警では、総延長190kmの道路で規制の見直しを行ったとのこと。「郊外ではなくて、普段から取り締まりをしている市街地の緩和状況を教えて欲しい」と頼むと、右に示したリストを読み上げてくれた。

無余地場所とは、当該車両の右側の道路上に3.5メートル以上の余地がない場所で法定駐車禁止場所だ。(道路交通法第45の2)

つまり、クルマにとっては法定の駐車禁止場所なので、指定があろうがなかろうが関係ない。

なぜこんな無意味な規制解除をするのだろう?

<無指定区間(レベル4)の設置>

無意味な規制解除とは別の意味でなぜ?≠ネのが横浜駅北口の解除だ。これによって、この区間は24時間いつでも長時間無料で停められるようになった。いわば完全なる無指定区間(レベル4)である。

この場所は、法改正まえから路上駐車のメッカであった。駅まで歩いて5分ほどとはいえ、交通量はしれたもので迷惑性も低い。だから、近隣のオフィスなどへの訪問車がいつも鈴なりとなっていた場所だ。

いくら迷惑性の低い場所とはいえ、完全無指定(レベル4)はやりすぎだ。なぜ(レベル3)にしなかったのだろう?

埼玉県警のケース

埼玉県警はホームページに規制緩和の内容を発表している。

交通規制(駐停車禁止・駐車禁止)見直しのお知らせ

警視庁の見直し状況

解除:75区間、13,430km

緩和:617区間、109.467km

(06年1月時点)

それによれば27箇所33区間8178mの規制緩和が実施区間がしめされている。また「パーキングチケット等の設置措置をしています。」とつづき、そのあとにパーキングメーター/チケットの設置場所リストが掲載されている。

まるで規制緩和の一環としてパーキングメーター/チケット(レベル3)を増やしたような書き方だ。しかしながらホームページに掲載されたパーキングチケット等の設置場所はむかしからあるもので、法改正の前後に追加したものではない。現実にはパーキングメーター/チケットはこの5年間ほど減らしているそうだ。

埼玉警察のケース
春日部駅前メインストリート

減らしているのに増やしているかのような発表の仕方はさておき、そのほかの見直し状況を県警発表から読み取ろう。すると、写真入りで大きく書かれた春日部駅と久喜駅の駅前通りでの規制解除が大きく扱われている。どうやらここをアピールしたいらしい。

春日部駅と久喜駅の駅前通りでの規制解除は、前述の神奈川県警のケースと違ってビジネスアワーに限定された無指定(レベル4)だ。

ターミナル駅ではないとはいえ、駅前のメインストリートをなぜ無指定(レベル4)にしてしまうのだろうか。

無料パーキングの可能性

 時間制限駐車区間は、道路交通法第49条1項,2項によって、パーキングメーターまたはパーキングチケットの設置が原則とされている。しかし、同法第3項の例外規定によって、無料のパーキングゾーンを作ることは可能だ。ただし前例はない。
法第49条第3項
前二項に定めるもののほか、公安委員会は、時間制限駐車区間において駐車しようとする車両の運転者に対する情報の提供、時間制限駐車区間において駐車する車両の整理その他時間制限駐車区間における駐車の適正を確保するために必要な措置を講じなければならない。

パーキングメーターをつけない理由

それにしても、なぜ警察は(レベル3)をふやさないのだろう。

その理由を都道府県警察に聞いても、まともな回答が得られることはない。

麻布十番の一方通行路について、ガイドラインが発表された直後の2006年5月18日、麻布警察署に聞いてみた。

北海道警察のケース
北海道警察は、札幌市との協議の結果、特別なカードを表示した荷さばきの普通貨物車両に対し、市の中心部22箇所において20分間の駐車を許容するやり方をとった。
『荷さばきルールを守ろう宣言カード』というカードには、「この証明書は駐車を許可するものではありません。」と記されており、札幌商工会議所や北海道トラック協会で配布されている。

この手法は、札幌商工会議所や地元トラック協会の要望を受け、北海道警察が「特例中の特例」として導入したと報道されている。

交通規制係の警察官は「(規制を変えたら)大変なことになりますよ」と繰り返すばかりだ。

神奈川県警本部の交通規制課にも(レベル3)にしない理由を聞いてみた。

交通規制課の担当者が示したポイントは、は駐車対策課の仕事で、交通規制課ではを残すか解除するかしかできない、という部分である。

警察発表のトリック

長期的に(レベル3)を減らしているのは全国的な傾向である。一方、取締り強化に伴う規制緩和が報告されている。しかし、その主軸となるのは、全道路の総延長に対する解除・緩和区間の比率だ。

約2万4600区間、約1万9600km(約10.8%)の駐車規制を解除・緩和した。

新たな駐車対策法制の施工状況より

解除・緩和する場所が駐禁取締りのない山林の道路であろうが、人っ子ひとりいない田園地帯であろうが関係ない。ただ「○△%を解除・緩和した!」というデータのための措置である。

こんな子供だましのトリックが全国一律で実施されているのは、警察庁のトップダウンによるものであり、取締り強化に対する反発を受け流すためだろう。

取締り強化だけでなく、規制緩和もやっている! ―― と。

都心部で実験的な無指定区間をつくるのは、タダで停めたいクルマをそこに集中させて混乱を呼び、そして「ほーら、やっぱり規制しないとダメでしょ」と言うためだろう。

パーキングゾーンをつくらない本当の理由

警察が(レベル3)をつくらない本当の理由は、都道府県警察のレベルではなく、霞が関の中央合同庁舎にある。国家プロジェクトによって、道路特定財源の使い道を決めてしまったことが本当の理由である。

安全・安心なまちづくり

 社会資本整備重点計画をベースとした事業で、ひんぱんに登場するキャッチコピーが「安全・安心なまちづくり」だ。
 これまでクルマ中心だった道路整備を歩行者優先にする、というクルマを運転しない人たちが手をたたいて喜びそうなキャッチコピーである。
 しかしながら、これまでがクルマ中心であったというのは語弊がある。正しくは、都会で集めた財源を田舎の高速道路建設に注いでいたのであって、都会のクルマが恩恵を受けるような事業はほとんどなかった。あっても別料金の有料道路だ。

安心歩行エリア

  警察と国交省が一枚岩となって推し進める「安全・安心なまちづくり」のうち、警察が担当する事業は、「安心歩行エリア」と命名されている。
 もちろんこれらの施策そのものを否定する理由はない。問題なのは、そのアメを全国一律すべての道路に適用させようとすることによって、ドライバーやライダーが苦しむことだ。  
新横浜の場合
 
  このように、警察がパーキングゾーンをつくらないのは、国がクルマを運転しない人たちに媚びる施策を大々的に打ち出しているからである。

ちなみに利権を生み出す公共事業には次の2パターンがある。

  1. 収益性のない事業 → 予算そのもの
  2. 収益性のある事業 → 予算+ハコモノが生み出す収益

多額の予算を編成または執行する権利を握ることは、それそのものが利権となる。さらに、予算をつかってできたハコモノで収益が得られるなら、国と地方のお役所が得る利権はダブルとなる。

ダブル利権の代表例は、高速道路だ。そして現在、ハコモノ駐車場に対して未曾有のバラまきが行われている。

国と地方のお役所がダブル利権を得る一方で、ドライバーやライダーはダブルの負担を強いられることになる。

ガソリン税などの税金 + 通行料金や駐車料金だ。

 

潤沢な道路財源とその使い道

道路財源の一部は、道路特別会計に組み込まれる。
詳細はコチラ
一般会計部分も、道路に関連する事業であることに着目しよう。
次に赤枠「道路整備特別会計」の項目と金額を整理し、一覧にした。



  (億円)
交通円滑化事業費 3945
地域連携推進事業費 9069
直轄道路維持修繕費 2094
交通円滑化事業費補助 788
地域連携推進事業費補助 1982
雪寒地域道路事業費 305
雪寒地域道路事業費補助 320
道路調査費 187
交通調査費補助 9
河川等関連公共施設 232
後進地域特例法適用 309
道路維持費補助 1







交通連携推進事業費 475
交通連携推進事業費補助 761
沿道環境改善事業費 1565
沿道環境改善事業費補助 131
交通安全施設等整備事業費 1015
交通安全施設等整備事業費補助 612
交通事故重点対策事業費 782
電線共同溝整備事業費 734
電線共同溝整備事業費補助 71
市街地環境改善事業費補助 117
住宅市街地総合整備促進事業費補助 531
都市再生推進事業費補助 30
道路交通環境改善促進事業費補助 22
合計 26089
モトは財務省>予算・決算>H18>予算書>特別会計予算

警察分

次期特定交通安全施設等整備事業長期計画の主要施策とアウトカム目標(案) (都道府県公安委員会分)

駐車場に対する補助金(作成中)

内容 補助額
  1/2
  1/2
  1/2
  1/2
  1/3
  1/3
  1/3
いったい駐車場にどれだけの道路財源を使ったのか?
国土交通省の担当者にこう尋ねたところ、どうやって調べたらよいかわからないそうだ。

もっと簡単な図にすると次のとおりだ。

このように、お金の使い方を中央が決めて、地方はそれに従うという構図となっている。これは1980年代から指摘されつづけた日本の構造的な問題だ。

システムが複雑であるほど、不正が介入する余地が増え、同時にチェックを阻害する。また、霞が関という一般世間から隔絶した場所で決められるので、民意が反映されにくくなる。

だから、国から地方に権限と財源を委譲することが求められているのである。

現在、道路特定財源の一般財源化が話題となっている。中央でそのカネをどう使うかではなく、国と地方が抱える根本的な問題を解決するために、権限と財源の両方を委譲するべきだろう。

シンプルな制度によって、ユーザーの意見が通りやすくなるし、不正も介入しにくくなる。

有料の道路が生み出す利権

ザ★公共事業

駐車場が生み出す利権

禁断の公共駐車場

現在のままでは、一般道路は高速道路と同じ運命をたどるのかもしれない。もちろん一般道路で通行料金はとられない。

とられるのは、駐車料金と違反したときのペナルティだ。