“公益”の国際比較
クルマに関わる公益法人のケース

任意の非営利組織は、英語だとvolantary-groupと訳される。
volantaryはボランティアの形容詞だ。
日本のボランタリー・グループは、各省庁の所管の下に細分化されているが、
はたして“公益”に効果をあげているのだろうか?



公益の種別 ⇒

Turing&Sports
ロードサービス&モータースポーツ
 
Safety 
交通安全
 
Accidental-case
交通事故の場合
縦割りの
ニッポン
ニッポンで公益のための非営利組織といえば、先ず社団法人や財団法人など、無数の公益法人があげられる。 しかし、“公益”とは名ばかりで、組織の権威と関連業界の利益を優先していることが頻繁に指摘されており、「官主導型談合の隠れミノだ」といった辛らつな批判さえ存在する。また非営利目的の民間組織とされているにもかかわらず、役員は天下りの指定席となっており、天下りの人数によって、補助金の額が決まることもある。これまでも“運営の非合理性”や“不透明さ”から批判は後を絶たなかったが、「公益法人の設立許可及び指導監督基準」と「公益法人 に対する検査等の委託等に関する基準」が施行(1998)されるまでは、役員名簿や財務内容さえ公表されなかった。
JAF - (社)日本自動車連盟 [警察庁]
会長の仁平圀雄氏は、第77代警視総監
NOTE
1997年4月の規制緩和まで、高速道路でのロードサービスはJAF1社に限定されていた。
こうして独占的な地位を確率したJAFは、日本道路公団などから事務所などの施設を無償で借りていたほか、通行証の無料発行も受けていた。

(財)全国交通安全協会 [警察庁]
(財)全日本交通安全協会 [警察庁]
(社)全国自動車運転教育協会 [警察庁]
(財)安全運転研修推進協会 [警察庁]
(財)日本交通安全教育普及協会 [警察庁]
(社)全国二輪車安全普及協会 [警察庁]
(社)日本自家用自動車管理業協会 [警察庁]
(財)佐川交通社会財団 [警察庁]
(財)安全運転研修推進協会 [警察庁]
(社)全国自動車運転教育協会 [警察庁]
(社)全日本指定自動車教習所協会連合会 [警察庁]
(社)全日本トラック協会 [国交省]
(社)全国ダンプカー協会 [国交省]
(社)全乗連(社)全個協 (タクシー) [国交省]

交通安全施策の全体像

(財)交通事故総合分析センター [国交省]
損害保険料算出機構(旧自算会) [金融庁]
(社)日本損害保険協会 [金融庁]

NOTE
「事故分析」と「損害補償計算」という表裏一体の公益事業は、異なる官庁が所管する別々の機関 によって行われている。
その他、交通事故にかかわるの非営利組織
政府出資法人 自動車事故対策センター
独立行政法人 交通安全環境研究所 [国交省]
(財)国際交通安全学会 [警察庁]
(財)交通事故紛争処理センター [内閣府]


海外
■オート・クラブ
極一部を除き、クラブメンバーや保険会社の出資によって運営される非営利組織。
ロードサービス、保険業務、交通安全教育、各種統計、クラッシュテストなどのサービスの提供ほか、
クルマ関係諸税アップへの反対運動、交通規制への提言など、ドライバーの権利を擁護する活動も行われている。これらドライバー団体の意見は、ドライバーを代表する公式発言として、政府や経済界に認められ、影響力を持っている。
■事故調査研究専門機関
背景が灰色の枠内は、交通事故の調査研究を行う独立した政府機関。
アメリカ
NMA - National Motorists Association -交通事故の研究、交通安全教育などを行う。1982年設立。
AAA - Foundation for Traffic Safety -ロードサービス、旅行サービスを行う。合理的な速度規制、スピードトラップの撤廃、不公正なクルマへの課税への反対、理不尽な交通法規に反対している。1947年設立。
NTSB - National Transport Safety Bond - 陸海空の事故調査機関。設立当初(1967)はDOT の内部組織であったが、事故原因の究明のために独立した事故調査機関となった(1975)。独立したことによって、調査結果の公正さが確保され、調査結果の活用の実現が可能となった。
カナダ
CAA - Canadian Automobile Association-ロードサービスや保険業務など。AAAと提携。1913年設立
イギリス
RAC - 母体であるRoyal Automobile Clubは1897年の創立。1999年に営利企業となった。ロードサービスほか。
フランス
FIA - Federation internationale de l'automobile - 1904年創立。モータースポーツ界の頂点にある団体であるが、ロードサービス、クラッシュテスト、旅行サービスの提供を行う。JAFはFIAのメンバーになっている。
ドイツ
オランダ
RVV -
イタリア
スウェーデン
SHK - Statens haverikommisson - 重大事故を調査分析する政府組織。元裁判官で構成される。

不合理な縦割り
 国際的な「道路交通」は、「航空」「鉄道」「海上交通」と並び、TRANSPOATATION(交通)のひとつであるとの位置付けがなれている。 そして「道路交通事故」は、「道路」「航空」「鉄道」「海上交通」に共通する調査手法によって調査され、そして調査・研究の結果を事故防止など、さらに進んだ課題に活用されるようになってきた。
 一方、ニッポンでの「道路交通」は 、“安全”は警察庁、“車両”は国交省、“損害保険”は金融庁といったように、中央省庁の縄張りによって分類されている。

クルマ社会における警察の正義
 「ドライバーの権利」を視点とすると、ニッポンには、タクシーやトラックなどの業界意見を代表する組織はあるが、一般ドライバーを代表する組織はない。なお、海外で「ドライバーの権利」を主張する団体は、例外なくロードサービスから発足している。ロードサービスを行う非営利組織は、ニッポンだと日本自動車連盟(JAF)になる。しかし警察の所管する社団法人が、ドライバーの意見を代表してくれるわけがない。その一方、結果の伴わない“弱者救済”を掲げる警察は、不条理な取締りさえをも正当化してきたのだ。ドライバーには意見する場所さえも与えられなかったといっても過言ではないのである。

有効な事故防止ができない原因
 もちろん、弱者保護・被害者救済の必要性に論は待たない。しかし、政・官・業界からニュートラルな位置から交通事故を研究し、その問題点を指摘する専門家の意見には、警察の調査手法への疑問,開示されない事故調書への不満,警察調書を疑わずに審判する裁判所,公益法人が決める算定率の不条理,中央省庁サイドに擦り寄る保険会社が指摘されている。つまり、交通行政システムの構造的な問題だ。このように縦割りされた各々の機関が、各々の権威と利益を優先するなら、必ず合理性が失われるのである。そして、交通行政システム全体が、合理性を欠いている以上、事故防止に向けた取り組みなどできるわけがないのだ。



交通行政に「構造改革」の必要はないか?
 ニッポン社会は、それぞれの官庁が競うように設立した2万を越える公益法人や、その傘下の官庁OB企業、さらに民間企業を含めた“談合経済圏”という高コスト構造に、血税を浪費してきた。そして、この官主導型社会では、官と業の利益が追求されることはあっても、民(Public)の利益が省みられることはなかった。だから、日本は経済大国だったのに生活大国にはなれなかったのである。
 「痛み」を覚悟する庶民と、「どうしてオレの天下り前に・・・」と“先送り”をしているようにさえみえるお役人との明快なコントラストは、構造改革の難しさを象徴しているのかもしれない。